八田亨『ダイナミズム』展@シボネ青山|輪湖雅江の器とごはん | ページ 2 | カーサ ブルータス Casa BRUTUS

八田亨『ダイナミズム』展@シボネ青山|輪湖雅江の器とごはん

器は料理を盛ってこそ!ということで、人気作家の最新作を発表する個展に合わせて、作家本人にも料理を作ってもらっちゃおう…という無茶ぶり企画4回目。薪窯で焼いた力強い器で人気の八田亨さんが暮らす、大阪・冨田林の工房を訪ねました。なんと1000点の作品が並ぶという話題の個展は、青山の〈CIBONE Aoyama〉で9月20日から開催!

キッチンはコンクリート製のアイランド型。棚には自作の器のほか、同世代の作家ものがたくさん並ぶ。中村友美の銅製ミルクパン、長谷川奈津の陶器、村田森の染付皿、竹俣勇壱のカトラリーなど。
愛用の庖丁は大阪・堺の職人がつくったもの。「めっちゃ切れるんですよ。堺には刀鍛冶の文化が残っているから」
実家から持ってきたというずんどう鍋でカレーを煮込む。「大阪はカレー天国。スパイスや味付けに凝ったカレーも多いし、おいしい店もたくさんある」
とうもろこしを丁寧に切って下ごしらえ。6人家族なので大量につくるのは慣れたもの。
きれいに切った野菜や根菜を素揚げしていく。カウンターは1辺2m70cm。広くて作業しやすい。
揚げ物鍋は温度計付き。「かき揚げは170~180度くらい。素揚げは170度前後かな」
キッチンはコンクリート製のアイランド型。棚には自作の器のほか、同世代の作家ものがたくさん並ぶ。中村友美の銅製ミルクパン、長谷川奈津の陶器、村田森の染付皿、竹俣勇壱のカトラリーなど。
愛用の庖丁は大阪・堺の職人がつくったもの。「めっちゃ切れるんですよ。堺には刀鍛冶の文化が残っているから」
実家から持ってきたというずんどう鍋でカレーを煮込む。「大阪はカレー天国。スパイスや味付けに凝ったカレーも多いし、おいしい店もたくさんある」
とうもろこしを丁寧に切って下ごしらえ。6人家族なので大量につくるのは慣れたもの。
きれいに切った野菜や根菜を素揚げしていく。カウンターは1辺2m70cm。広くて作業しやすい。
揚げ物鍋は温度計付き。「かき揚げは170~180度くらい。素揚げは170度前後かな」
陶芸を始めたのは大学生の時。建築などを学ぶ環境デザイン学科に所属しながら、陶芸のゼミを選んだ。「建築や空間という、想像を超える大きなものに関わる世界も魅力的だったのですが、陶芸の、自分の手元ですべての世界が完結する面白さに惹かれたんです」

卒業制作で茶碗1000個を焼き、その後も陶芸の道へ進むことを決めた八田。生計を立てるために陶芸教室を開きつつも、結構長い間、「これでいいのかな」と迷い続けていた。実は、当時制作していたのはオブジェやアート。斬新で主張が強く、誰にも生み出せないものをつくるのが陶芸だと思っていたという。

そんな八田が、日常で使う器に目を向けるようになったのは、結婚して家族をもったころ。そしてもうひとつのきっかけが、日本の代表的なクラフトフェアでもある大阪・堺の「灯しびとの集い」。「2008年に発起人である知り合いの福岡彩子さんに誘われて参加した。僕はそれまで、“日常の器をつくる作家” という方々が存在することさえも知らなかったんです。彼らがつくる器の、なんでもない美しさに驚いた。シンプルで主張がなくて、それでも大きな魅力があることに衝撃を受けました」手探りではあったけれど、日常の器をつくる道にぐいぐい惹かれていった。「こうしたら使いやすいとか、使ってもらえるのが嬉しいとか、思いを込めて成形して焼いて、初めて“つくった”と言えるわけで。そういう、めちゃくちゃあたり前のことをイチからやり直した感じです」
揚げたてのとうもろこしを、白掛石皿に盛り付ける。「盛った時に余白が出るのがカッコいい器だと思う」
じっくり煮込んだカレーから甘い香りが立ち上る。「隠し味にりんごジュースを入れてるんですけど、以前、フルーティにしたくてたっぷり入れてみたら、酸味が強すぎて何を入れても中和されませんでした」
カレーの上に素揚げした野菜をのせる。八田の「よっしゃ!」という掛け声とともに完成。
揚げたてのとうもろこしを、白掛石皿に盛り付ける。「盛った時に余白が出るのがカッコいい器だと思う」
じっくり煮込んだカレーから甘い香りが立ち上る。「隠し味にりんごジュースを入れてるんですけど、以前、フルーティにしたくてたっぷり入れてみたら、酸味が強すぎて何を入れても中和されませんでした」
カレーの上に素揚げした野菜をのせる。八田の「よっしゃ!」という掛け声とともに完成。
「器のカタチは、毎日の料理や食事から自然に生まれてくる」と言う八田さん。食材を盛る。テーブルに置いて、手に持って、口をつけて食べる。運んで洗って棚にしまう。そういう営みにふさわしい普遍的なカタチは、昔からそれほど変わってないんじゃないかとも考えている。いっぽうで、「焼き」には並々ならぬ思い入れを持っている。「大好きな李朝陶磁や、それをルーツとする民藝や先輩陶芸家の作品からも、それなりに影響を受けていると思います。ただ、作家としてやっていく限りは、自分の意匠をきちんと残したいという思いもある」

たとえば、「白掛(しろかけ)」と呼ばれる八田の代表的な器。赤土で成形した上に白い化粧泥をかけて焼く、つまり李朝陶磁の粉引と同じような手法でつくる焼き物だ。「白掛」の呼び名は自分でつけた。八田は主に薪の窯で焼くのだが、化粧泥の掛け具合を変えたり、時には何度も焼いて深みを出したり、同じ白掛でもひとつひとつ表情も質感も異なるのが特徴だ。
白掛の器を中心にした本日の昼食。カレーのルーは、とろとろでフルーティ。甘くて食べやすいけれど後から辛さが追いかけてくる感じ。揚げたて野菜がまたカリッと香ばしく、スパイスの効いた大人の甘口カレーと抜群に合う。
器をつくる時にどんな料理が似合うかを想像したりするのかと聞いてみたところ、「はい、考えますね。特に家を建ててからは生活と仕事が深くリンクするようになって、こういうキッチンやダイニングテーブルに合う器をつくりたいと思うようになりました」たとえば、そんな日常の中から生まれたのが白掛のリム皿。うつわ好きだけでなくプロの料理人や飲食店オーナーにも人気の高いアイテムだ。「質感も色も和のテイストだけど、洋食を盛った時にすごくカッコよくなる焼き物。そんなイメージでつくっています」まさにまさに、その通り! モダンなテーブルに似合う和の器。

特にこのリム皿、今日みたいなカレーにぴったりだ。立ち上がりがあるからスプーンで最後まですくえるし、とろみのあるルーがリムのところに溜まっている感じがなんともおいしそう。「サイズは八寸(直径24cm)です。普段使いの器としては、七寸(直径21cm)が汎用性もあって使いやすいんですね。僕の八寸はその万能サイズに少し余白をもたせた大きさ」つまり、機能的には七寸だけれど、盛った時に余白が生まれてカッコよく見えるよう、絶妙な深さやカーブ具合やリムがつけられている。実際に料理を食べると、箸やスプーンがあたった時の感触が心地よくてびっくりする。ちょっと重みのある持ち心地もいいし、洗ったり拭いたりする時の手も気持ちいい。