工芸品のように美しい、インドの出版社〈タラブックス〉の本。 | ページ 2 | カーサ ブルータス Casa BRUTUS

工芸品のように美しい、インドの出版社〈タラブックス〉の本。

インド南部の街、チェンナイを拠点に活動する出版社〈タラブックス〉。彼らの代表作である絵本『夜の木』は、シルクスクリーンによる印刷の美しさと、手製本による温もりを感じられる、アートピースのような一冊だ。世界を魅了する〈タラブックス〉の本づくりとは? その背景に迫る展覧会が〈板橋区立美術館〉で開催されている。

民族画家と初めてコラボレーションした、記念碑的絵本『インドのどうぶつ』。
『水の生きもの』はインド東部の伝統芸術、ミティラー画を描くアーティストと作り上げた絵本。日本語訳も河出書房新社から販売されている。
『マンゴーとバナナ まめじかカンチルのおはなし』の原画。南インドの伝統的な布地カラムカリの作家が、布に描いた絵を印刷している。
まめじかのカンチルを主人公にした絵本の第二弾『神聖なバナナの葉』の原画。インド東部に伝わるパタチットラ画家が描いた。
『はらべこライオン』初版。1995年に出版されたもので、〈タラブックス〉が初めて作ったハンドメイド本。
もうひとつのメイン展示室では、ゴンド族以外の民族画家とのコラボレーションが紹介されている。『インドのどうぶつ』はその中でも貴重な一冊。この本から民族画家との絵本づくりがスタートしているのだ。

そもそものきっかけは、〈タラブックス〉を主宰する2人の女性、ギータ・ウォルフとV・ギータが、2000年にインド国内を巡回した伝統芸術展で、民族芸術の美しさに触れたこと。そこから専門家を交えて1年のリサーチを行い、様々な民族を訪ね、彼らの描く民族画に触れたという。なぜ、そこまでの作業が必要だったのか。それは、これらの民族画がインド国内でも一部の人にしか知られていないから。ましてや、絵本などの出版物になったこともなかったという。

2003年に発表された『インドのどうぶつ』はシルクスクリーンを用いた美しいハンドメイドブックであると同時に、民族画をひとつのアート作品として取り上げた、革新的な絵本だった。
長さ3メートルの絵巻物がかかった展示室。
蛇腹折りになった絵本『つなみ』。インドには「ポトゥア」と呼ばれる絵巻物師がいるが、彼らの絵巻物には文章がない。そこに文章を添えて本とした一冊。
シルクスクリーンを刷る際は原画を版にし、色数ごとにシートを作る必要がある。印刷技術の高さを感じることができる資料も展示されていた。

インド南部の街から世界へ。小さくも挑戦的な本づくり。

同じ展示室には、一際目を引く、簾のような絵も。これはインドの絵巻物で、〈タラブックス〉が手がける絵本『ツナミ』のアイディア源でもある。蛇腹のように折りたたまれた絵本『ツナミ』は、畳んだままだと本のように読め、広げると迫力ある一枚の絵となって、物語を伝えてくれる。

ギータ・ウォルフとV・ギータがインドの伝統文化にこだわるのには訳がある。もともとインドには、子供向けの絵本がとても少なかったというのだ。彼らが嘆いていたのは、「なぜ、子供たちは海外の絵本を見て育たないといけないのか」ということ。これまで口承文学として受け継がれてきた物語を、本という形にし、インドらしい絵本をつくることが、彼らの活動の出発点でもある。
展示内に設置された台。側面には印刷時に出たミスプリントが活用されている。〈タラブックス〉と本づくりもしている建築士でデザイナーの齋藤名穂が手がけた。
〈タラブックス〉の最新刊は齋藤名穂の著書『TRAVELS THROUGH SOUTH INDIAN KITCHEN』。南インドの食文化がまとめられている。
会場のブックコーナー。会場ではタラブックスの日本未入荷の本も手に取れる他、一部は特設ショップで購入できる。
〈タラブックス〉の活動に世界の注目が集まるのは、彼らのつくる本の美しさ、斬新さだけが理由ではない。ギータ・ウォルフとV・ギータが大切にしているのは“チームで本を作ること”。総勢50名のスタッフが一丸となり、企画から印刷、製本、販売まで行っており、信念ある本づくりのために、あえて小規模であり続けようとしている。作家やアーティストだけでなく、デザイナーや工房の職人、営業スタッフからも平等に意見を聞き、全員参加のもと、本づくりをしていることも特徴だ。代表作『夜の木』が世界で90万部を超えるヒットとなっても、チェンナイという小さな街で地に足をつけて活動を続ける〈タラブックス〉。

今の時代における“挑戦的なものづくり”に触れられる貴重な展覧会だ。

『世界を変える美しい本 インド・タラブックスの挑戦』

開催中〜2018年1月8日。
*刈谷市美術館で巡回展も開催。2018年4月21日〜6月3日。

〈板橋区立美術館〉

東京都板橋区赤塚5-34-27
TEL 03 3979 3251。9時30分〜17時(最終入館〜16時30分)。月曜休(1月8日は祝日のため開館、12月29日〜1月3日は休館)。一般観覧料650円。

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