CULTURE
総額おいくら万円? アート作品満載のトム・フォード新作映画|山縣みどりのアート&ゴシップ
October 28, 2017 | Culture, Art, Fashion | casabrutus.com | text_Midori Yamagata editor_Keiko Kusano illustration_Yoshifumi Takeda
『シングルマン』で鮮烈な映画監督デビューを飾って8年。スタイリッシュな映像と巧みなストーリーテリングで映画ファンを魅了したトム・フォードの監督第2弾がついに日本公開される!
真っ赤な布の前で全裸の肥満女性が脂肪を揺らしながら舞い踊る! ある女性は花火をくるくると回し、ある女性はマーチングバンドの帽子を小粋にかしげている。という禁忌を犯したようなショッキングなビデオ映像で幕開けするのは、トム・フォード監督の長編映画2作目『ノクターナル・アニマルズ』だ。
映像は主人公スーザン(エイミー・アダムス)がキュレーションした展覧会の展示物だが、実際はフォード自身によるビデオアート。最近、ファッション界では激痩せモデルを起用しない方向だが、フォード監督はさらに先鋭的。老いとともに肉体がふくよかに変わる女性をあるがままに受け入れている姿が、現代のルノワールでありルーベンス! とにかく時代の先端!
映像は主人公スーザン(エイミー・アダムス)がキュレーションした展覧会の展示物だが、実際はフォード自身によるビデオアート。最近、ファッション界では激痩せモデルを起用しない方向だが、フォード監督はさらに先鋭的。老いとともに肉体がふくよかに変わる女性をあるがままに受け入れている姿が、現代のルノワールでありルーベンス! とにかく時代の先端!
オースティン・ライトの同名小説をフォード自身の大胆な解釈で脚色した本作は、ヒロインのスーザンを軸とするネオ・ノワール的なサイコ・スリラー。ギャラリストとして活躍する彼女の元にある日、元夫エドワード(ジェイク・ギレンホール)から小包が届く。中身は、彼女との離婚に着想を得たという小説「ノクターナル・アニマルズ」。小説を読み始めたスーザンは内容に心乱され、封印したはずの罪悪感にさいなまされ始める!?
物語はスーザンの現在と過去、そして元夫が書いた小説という3つの舞台を交錯させながら進行する。何よりも目を奪われるのが、トム・フォードのハイレベルな美意識が発揮されたハイアートな世界観だ。すべての作品がスーザンの人生を語り、その時々の彼女の心情を暗喩するように配置されているのも見逃せない。映画中で別の物語が展開する構成であり、さらには映画芸術に多数のコンテンポラリーアートを挿入した二重の“入れ子構造”になっている。
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