CULTURE
2つの劇場を行き来する、“距離”を描く柴幸男の新作。
『カーサ ブルータス』2017年10月号より
September 25, 2017 | Culture | a wall newspaper | photo_Kaori Nishida text_Taisuke Shimanuki editor_Yuka Uchida
劇作家・柴幸男が『フェスティバル\トーキョー』で新作舞台を発表! 隣り合う劇場で同時刻に同キャストで上演される2つの物語。前代未聞の構造が生み出すのは“距離”の感覚でした。
“人の心の動きは、実際の距離に影響を受けていると思うんです”
宇宙の誕生と消滅を、ある家族の日常に重ねた『わが星』など、ユニークな設定や仕掛けによって、心や時間の隔たりを演劇で表現してきた柴幸男。『フェスティバル\トーキョー』で発表する新作では、「距離」をテーマに、隣接する2つの劇場で2つの作品を同時上演する。メインビジュアルを日本と台湾の写真家2名に依頼し、同じ被写体をそれぞれの視点で撮影してもらうなど、距離にまつわる様々な企みを作品に巡らせる柴に話を聞いた。
Q 2つの劇場を8人の俳優が行き来する内容で、観客はどちらかを選んで観劇するそうですね。
音楽フェスの感覚で演劇を作ろうと思ったのが最初です。広い会場内に複数のステージがあり、それぞれで別のことが起こっている。でも、フェスと違って、座席が決まっている劇場には基本的に移動の自由はありません。そこで、目の前の芝居を咀嚼しながら、遠い場所を考える体験を作ってみたいと思いました。
Q 両方の上演をコンプリートすると、作品の全容がわかる?
成長して離れ離れになる幼なじみのストーリーが軸になるのですが、両方を見ないと完成しないわけではないんです。本格的な稽古に入る前に、俳優陣に今までに行った一番遠い場所について話を聞いて、ペアでダンスを作ってもらうワークショップを行いました。そしてある程度ダンスが仕上がったところで、今度は壁を隔てた別々の場所で、相手を想像しながら踊る実験をしたんです。
Q 不思議な試みですね。
ええ。でも、それを見た僕も、踊った俳優も「ここにはいない誰か」の存在を感じられました。演劇の魅力って、劇場に足を運んで、ある出来事の当事者になれることですが、逆に当事者になれない状況を設定してみたかった。あえて距離を作ってみる、というか。
Q 距離への関心はどこから?
東日本大震災や、海外で頻発するテロ事件からです。悲しい出来事だけれど、その場から離れたり時間が過ぎるとその感覚は薄れていく。かといって、生々しい体感をずっと持ち続けることのツラさもあって、どちらが正しいとは言い切れない。隔てられた2つの劇場の距離を想像することで、劇中に登場しないからこそ存在が感じられる「遠い共感者」を生み出したい。そう思っています。
Q 2つの劇場を8人の俳優が行き来する内容で、観客はどちらかを選んで観劇するそうですね。
音楽フェスの感覚で演劇を作ろうと思ったのが最初です。広い会場内に複数のステージがあり、それぞれで別のことが起こっている。でも、フェスと違って、座席が決まっている劇場には基本的に移動の自由はありません。そこで、目の前の芝居を咀嚼しながら、遠い場所を考える体験を作ってみたいと思いました。
Q 両方の上演をコンプリートすると、作品の全容がわかる?
成長して離れ離れになる幼なじみのストーリーが軸になるのですが、両方を見ないと完成しないわけではないんです。本格的な稽古に入る前に、俳優陣に今までに行った一番遠い場所について話を聞いて、ペアでダンスを作ってもらうワークショップを行いました。そしてある程度ダンスが仕上がったところで、今度は壁を隔てた別々の場所で、相手を想像しながら踊る実験をしたんです。
Q 不思議な試みですね。
ええ。でも、それを見た僕も、踊った俳優も「ここにはいない誰か」の存在を感じられました。演劇の魅力って、劇場に足を運んで、ある出来事の当事者になれることですが、逆に当事者になれない状況を設定してみたかった。あえて距離を作ってみる、というか。
Q 距離への関心はどこから?
東日本大震災や、海外で頻発するテロ事件からです。悲しい出来事だけれど、その場から離れたり時間が過ぎるとその感覚は薄れていく。かといって、生々しい体感をずっと持ち続けることのツラさもあって、どちらが正しいとは言い切れない。隔てられた2つの劇場の距離を想像することで、劇中に登場しないからこそ存在が感じられる「遠い共感者」を生み出したい。そう思っています。
『わたしが悲しくないのはあなたが遠いから』
作・演出:柴幸男。10月7日〜15日(10日休演)。自由席4,000円、当日4,500円。
〈東京芸術劇場 シアターイースト/シアターウエスト〉