CULTURE
銀座を撮り続けた写真家、伊藤昊を知っていますか?
『カーサ ブルータス』2020年5月号より
April 11, 2020 | Culture, Art | a wall newspaper | text_Hikari Torisawa
1964年。オリンピックに沸く東京・銀座の街で物語を探し、見つけ、フィルムに焼き付けた写真家の話。
銀座で1冊の本を売る〈森岡書店〉の森岡督行さんが惚れこんだモノクロの写真。東京オリンピックが開催された1964年とその前後、銀座を歩き回り、銀座を撮り続けた写真家がいた。
「昨年の夏に伊藤昊(こう)さんの写真に出会いました。社会の矛盾や暗部を注視したフォトジャーナリズムの手法を踏まえつつ、新しく生まれる建築や文化、ファッションなど、都市の繁栄の明るさに目を向けてそれを捉えた。銀座が好きで、それを素朴に写し撮っていく伊藤さんの視線に共感を覚えて、写真集を作ろうと思ったんです」
「昨年の夏に伊藤昊(こう)さんの写真に出会いました。社会の矛盾や暗部を注視したフォトジャーナリズムの手法を踏まえつつ、新しく生まれる建築や文化、ファッションなど、都市の繁栄の明るさに目を向けてそれを捉えた。銀座が好きで、それを素朴に写し撮っていく伊藤さんの視線に共感を覚えて、写真集を作ろうと思ったんです」
1943年に生まれ2015年に世を去るまで、発表された写真はごくわずか。東京綜合写真専門学校を卒業した後に写真展を2度開催したものの、写真集を出版することもなかったという。
「フリーのカメラマンとしての仕事を35歳で辞めて以降は、益子に拠点を移して陶芸家として活動していたそうです。20代の短い期間に撮っていたのが銀座と横浜。欧米に憧れて、欧米のような煉瓦の街並みを作ろうと夢見て生まれた銀座という街を劇場に見立てて、そこに一瞬の物語を探した。三越の前に立つ新婚旅行中のようなカップル、碌々館の駐車禁止の看板の前に停められたバイク、キャバレーらしき場所に掲げられた “インド大魔法” の6文字など、ユーモアが重なり合う瞬間を待って、それを写真に忍びこませていったのだろうと思います」
「フリーのカメラマンとしての仕事を35歳で辞めて以降は、益子に拠点を移して陶芸家として活動していたそうです。20代の短い期間に撮っていたのが銀座と横浜。欧米に憧れて、欧米のような煉瓦の街並みを作ろうと夢見て生まれた銀座という街を劇場に見立てて、そこに一瞬の物語を探した。三越の前に立つ新婚旅行中のようなカップル、碌々館の駐車禁止の看板の前に停められたバイク、キャバレーらしき場所に掲げられた “インド大魔法” の6文字など、ユーモアが重なり合う瞬間を待って、それを写真に忍びこませていったのだろうと思います」
もりおかよしゆき
1974年山形県生まれ。1929年築の鈴木ビルに惹かれ〈森岡書店〉を茅場町から銀座へ移して5年。版元として、編集者として、伊藤昊の写真集を制作。著書に『東京旧市街地を歩く』『荒野の古本屋』など。
1974年山形県生まれ。1929年築の鈴木ビルに惹かれ〈森岡書店〉を茅場町から銀座へ移して5年。版元として、編集者として、伊藤昊の写真集を制作。著書に『東京旧市街地を歩く』『荒野の古本屋』など。
『GINZA TOKYO 1964 photographs by ITO KO(仮題)』
東京・銀座の街に次々と現れる新しい風景を、人々の表情を、モノクロームの写真で見せる120枚を収録。予価6,000円(森岡書店)。
〈森岡書店銀座店〉
東京都中央区銀座1-28-15 鈴木ビル1F TEL 03 3535 5020。13時〜20時。月曜休。