奇想が奇想を呼ぶ、絵師たちの想像力に驚く。|青野尚子の今週末見るべきアート | ページ 2 | カーサ ブルータス Casa BRUTUS

奇想が奇想を呼ぶ、絵師たちの想像力に驚く。|青野尚子の今週末見るべきアート

伊藤若冲、長沢芦雪ら「奇想のスーパースター」8人を取りそろえた豪華な展覧会が開催中! それぞれの個性が楽しめます。

長沢芦雪《白象黒牛図屏風》(左隻)。左隻に黒い牛、右隻に白い象と、黒白の対比を見せる。紙本墨画 六曲一双 155.3×359.0cm 米国・エツコ&ジョー・プライスコレクション
長沢芦雪《白象黒牛図屏風》(右隻)。右隻の象は画面からはみ出している。右から見ていくとカラス、白い面と謎かけのような画面が続き、最後に象の顔が現れるのも楽しい。紙本墨画 六曲一双 155.3×359.0cm 米国・エツコ&ジョー・プライスコレクション
芦雪の動物はどことなく人間くさい。新発見の《猿猴弄柿図》は柿の実を抱えて岩に座る猿と、その岩を一生懸命よじ登る子猿を描いた絵。柿を持つ猿は上目遣いで口元を緩ませ、とぼけた表情を見せる。この甘い柿を今から独り占めして食べるんだ。そんなフキダシをつけたくなってしまう。定番の画題である龍や虎も獰猛というよりはユーモラスな味わいだ。
長沢芦雪《猿猴弄柿図》。およそ100年ぶりに再発見されたもの。柿を持つ猿のうれしそうな表情がいい。絹本着色 一幅 104.0×37.7cm 個人蔵
戦国武将の子として生まれたが一族が滅亡し、京都で絵師となった岩佐又兵衛。《山中常盤物語絵巻》は辻が修士論文のテーマに選んだ、美術史家としての出発点とも言える作品だ。これは源義経の母、常盤御前が盗賊に殺され、義経が敵を討つ、という物語を絵巻にしたもの。吹き出る血も鮮やかな凄惨な描写は源氏物語などの雅やかな絵巻とはまったく違う世界だ。
岩佐又兵衛《山中常盤物語絵巻 第四巻(十二巻のうち)》。常盤御前と侍女が衣をはぎ取られた場面。このあと2人はむごたらしく殺されてしまう。紙本着色 一巻 34.1×1259.0cm(展示期間:2月9日〜3月10日)
本展は「残酷な場面を含みます」と注意書きまでされている。しかしよく見ると極細の線描による人物の描写などはフランドル絵画ばりの細密さだ。残虐な描写にひるむことなく、画面のすみずみまで堪能したい。
狩野山雪《梅花遊禽図襖》。金地に優美な梅の花と鳥が描かれているが、樹木の大胆すぎる表現にぎょっとさせられる。紙本金地着色 四面 各184.0×94.0cm 寛永8年(1631) 京都・天球院 重要文化財 
華やかな金地に梅の木と、雉子などの鳥を描いた《梅花遊禽図襖》は狩野山雪の作。この枝振りの奇矯さはどうしたことだろう。ほぼ直角に2度も幹が曲がるなど、自然界ではおよそありそうにない。鳥の羽など細部はいかにもそれらしく描かれているのに、梅の木は盆栽のような不自然さだ。画面構成を優先し、自然の摂理を無視した強引さがある。《寒山拾得図》の、寄り目で「にたあ」と笑う表情も逃げ出したくなるぐらい不気味だ。山雪の師であり、義理の父である狩野山楽は狩野永徳の弟子だ。つまり、山雪は永徳の孫弟子になる。永徳の晩年の絵は「怪々奇々」と評されたが、山雪はさらにそれをエスカレートさせていったようだ。
歌川国芳《宮本武蔵の鯨退治》。この絵のような三枚続きの浮世絵は1枚ずつばらばらでも鑑賞できる構図にするのが普通だったが、国芳はパノラマ効果を狙って一続きの作品とした。大判三枚続 弘化4年(1847)頃 個人蔵
歌川国芳も最近、作品を見る機会が多い。彼は江戸末期、勇壮な武者絵で人気を博した。中でもヒーローたちが巨大な魚や妖怪と戦う図は彼ならではのもの。《宮本武蔵の鯨退治》では主人公の宮本武蔵がごく小さく描かれて鯨の不気味さ、巨大さを強調する。《相馬の古内裏》では巨大な髑髏が闇からぬっと顔を出す。この絵の原作では等身大の骸骨が数百体も現れることになっていたが、国芳はそれを一体の巨大な骸骨に変更した。画面をよりドラマチックかつ奇怪なものにする彼の工夫だ。その他にも大首絵(顔から首のクローズアップ)かと思うとアルチンボルドのように人体の集合体でできていたり、猫が集まって文字の形になっていたりと、どこからそんな発想がわいてくるのか不思議になる。
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