横尾忠則インタビュー:「奇想の系譜」との出会い。 | ページ 2 | カーサ ブルータス Casa BRUTUS

横尾忠則インタビュー:「奇想の系譜」との出会い。

曽我蕭白を引用した作品があるなど、奇想の画家とは何かと縁の深い横尾忠則。現在、〈東京都美術館〉で開催中の『奇想の系譜展 江戸絵画ミラクルワールド』ではスペシャルヴィジュアルの制作を担当した。展覧会の元になった辻惟雄著『奇想の系譜』が1970年に出版された時、すぐに買って読んだという。後年、横尾は多摩美術大学大学院で教授を務めることになるが、そのときの学長が辻だった。成城にある横尾アトリエを訪ねて話を聞いた。

アトリエには作品や本がそこかしこに。
ポール・デルヴォー、中宮寺の菩薩像、モーツァルト……。
今回は思わぬテーマを与えられたのでね。なんかちょっと面白いことをしようと思って。蕭白が描いた女性で、手紙を口に加えているのがあるでしょう、それを描くにあたって、僕にとって「昭和の奇想画家」の藤井千秋っていう人がいるんですが、その人の絵をまず母体にしたんです。

あの女性を僕がそのまま模写したって面白くないので、『なんじゃ、これ?』みたいなところに目を向けてもらいたくって。そこからいろいろ読み解いてもらえばいいんじゃないかと。
資料や画材が散乱するアトリエ。
作品の構想段階のスケッチと思われる。
曾我蕭白、白隠、鈴木其一の絵のコピーが見える。
山下さんがね、蕭白の『群仙図』の仙人のひとりがビン・ラディンに似てるっていうから、それならビン・ラディンを描いたほうがいいと思って、迷彩服着せてね。頭のあの格好は、彼のいつものスタイルであると同時に、蕭白が描いた、なんだか寒山拾得みたいな人に見立てて、あの形の帽子をかぶせました。中心の女性は黒人とかではなくて、昭和の初期の児童画で切り絵が流行ったんので、シルエット的なんです。そして、旅の僧(白隠)が画面の外から、シテの舞う異界を覗く能舞台として、この絵を描いています。
取材段階では描きかけだった横尾忠則×奇想の系譜展 スペシャルヴィジュアル《奇想の系譜》とともに。
奇想の画家たちは思い切り遊びまくっているわけですよね。だから僕もやっぱりここで遊ばないと意味がないと思ってね。奇想の系譜に出てくるような作品をそのままナゾッたって、彼らの遊びには負けてしまうから。彼らが遊んだ以上に、彼らが悪意を感じるようなものを描きたいと思ったわけですよ。

オマージュというのは、もとの作品とか作家をあまり尊敬したり、敬意を払ったりしすぎない方がいいと僕は思うんですよ。僕はオマージュっていうのは悪意を持たなきゃいけないと思っていてね。

たとえば、ピカソもベラスケスとかマネを換骨奪胎したじゃないですか。ものすごい悪意をもって描いている。それでこそ評価されるんです。ああいうのを普通に描いたら、パロディになっちゃう。今はパロディが軽い意味で現代美術のカテゴリーのひとつになりかけているけれど、やっぱりあのピカソの悪意に基づく換骨奪胎にはかなわないでしょう。

奇想の画家たちはその時代の様式からは外れてはいるけれども、それが何十年後、何百年後に評価されようとしているわけだからね。そういう意味でものすごく先取りしてる。悪意と尊敬がミックスされたような感じでいいんじゃないでしょうか。

やっぱり一瞬、拒絶反応してもらった方が、作品の寿命が長くなるんです。最初見たときに面白いって言ったらね、寿命が短いんです。簡単にわかられても困るんですよ。
今回は油彩で描いたが、寒くて乾きが悪く苦労したそうだ。

『奇想の系譜展 江戸絵画ミラクルワールド』

〈東京都美術館〉東京都台東区上野公園8-36。〜2019年4月7日。9時30分〜17時30分(会期中の金曜日、3月23日、30日、4月6日は20時)。月曜休(ただし、4月1日は開室)。TEL 03 5777 8600。

横尾忠則(よこおただのり)

1936年兵庫県生まれ。72年にニューヨーク近代美術館で個展。その後もパリ、ヴェネツィア、サンパウロ、バングラデッシュなど各国のビエンナーレに出品し世界的に活躍する。アムステルダムのステデリック美術館、パリのカルティエ財団現代美術館での個展など海外での発表が多く国際的に高い評価を得ている。2012年、神戸に横尾忠則現代美術館開館。2013年、香川県豊島に豊島横尾館開館。2015年、第27回高松宮殿下記念世界文化賞受賞。
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