安藤建築に篠山紀信の「情事」写真!? |青野尚子の今週末見るべきアート | ページ 2 | カーサ ブルータス Casa BRUTUS

安藤建築に篠山紀信の「情事」写真!? |青野尚子の今週末見るべきアート

安藤忠雄の建築 vs 篠山紀信の写真。どちらが勝つのか見当もつかない戦いが、山梨県・北杜市の〈清春芸術村〉で繰り広げられています。ストイックで硬質な安藤の空間に挑んだ、篠山紀信の“情事”写真の全貌をレポート!

〈光の美術館〉の中での、モデルのAIと篠山紀信。篠山はロケハンや天気待ちはしないのだという。そのときの天候にあわせてベストの写真を撮るのが彼の信条だ。
『光の情事』という展覧会タイトルについて篠山は言う。

「この建物では空間に光が入る、その空間と光だけでも情事みたいな妖しい関係なんです。そこに作品を並べると光によって見え方が変わって、より色っぽく見える。『情事』というのはモデルさんとの、光との、空間との情事なんです」
〈光の美術館〉カウンターにモデルを載せて撮ったもの。カウンターに反射する光がモデルの肉体を浮かび上がらせる。
篠山は一昨年、原美術館でも同様の個展を行った。原美術館は渡辺仁が設計した邸宅を磯崎新の監修で改修したもの。そのときはカラー写真だったが、今回はモノクロだ。

「光がダイナミックに入ってくる、それ自身がエロティック。その光と影のコントラストをはっきりさせたいと思った」
〈光の美術館〉2階。光は見ている間にも刻々と動いていく。
「鋭利で強い建築です。小さい空間の中にこれだけのデザインと緊張感が込められているのに驚く。ムダな場所やダレているところが全くないから、どこでも写真が撮れる。死んだ場所があると作品が生きないから、こういう要素は美術館には特に必要なんです」
モデルに落ちる光と影のコントラストはANDO建築ならでは。
撮影はよく晴れた夏の日だった。

「曇りだと見え方が全然違うはず。僕は、写真は一期一会だと思っているから晴れるまで待つ、といったことはしない。その日、そのときの天気を大切にしたい。〈光の美術館〉での撮影では天窓から差し込む光がどんどん動いていくのが面白かった。以前、土門拳さんと対談したときに『篠山くん、仏像は走ってるんだよ』と言われたのを思い出しました。床に反射する光は刻々と変わっていくから。だとすると、このANDO建築なんか超特急ってことになる(笑)」
〈光の美術館〉にもともと展示されていたアントニ・クラーベ作品の前で。 (c) Kishin Shinoyama
館内では実際にシャープな光があっという間に動いていくのがわかる。写真家は細かいステップを踏んでジャブを繰り出すボクサーのように、その動きに瞬時に反応していかなくてはならないのだ。
無機的なコンクリートと官能的な肉体とがコントラストを見せる。
2019年には、この〈光の美術館〉で杉本博司の個展を予定している。また〈素透撫〉の奥に杉本博司・榊田倫之・新素材研究所が設計する新築のゲストハウスが完成する予定だ。こちらの宿泊について詳細は決まっていないが、〈光の美術館〉で行われる建築家vs写真家の新たな戦いが楽しみだ。

『光の情事』 ── 篠山紀信 展

〈光の美術館〉(清春芸術村)
山梨県北杜市長坂町中丸2072。〜1月27日。10時〜17時。年末年始、月曜休(祝日の場合は翌平日休み)。1,500円。

青野尚子

あおのなおこ  ライター。アート、建築関係を中心に活動。共著に「新・美術空間散歩」(日東書院本社)。西山芳一写真集「Under Construction」(マガジンハウス)などの編集を担当。

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