パリ、歴史の交差点〈ヴェルサイユ宮殿〉に杉本博司が仕掛けたもの。 | ページ 3 | カーサ ブルータス Casa BRUTUS

パリ、歴史の交差点〈ヴェルサイユ宮殿〉に杉本博司が仕掛けたもの。

世界遺産である〈ヴェルサイユ宮殿〉で杉本博司の大規模な展示が開催中だ。日本の能の表現を借りて、この地に縁のある歴史上の人物たちを蘇らせ、マリー・アントワネットのためにはガラスの茶室を設置した。

●池の上にミニマルなガラスの茶室を設置した理由。

杉本博司《聞鳥庵》武者小路千家家元後嗣の千宗屋さんが茶会を行い、また、この場所でダンサー、伊藤郁女(かおり)さんのパフォーマンスも行われた。 Glass Tea House Mondrian, Bassin du Plat-Fond, Versailles, 2018, originally commissionned by Pentagram Stiftung for LE STANZE DEL VETRO, Venice. Architects : Hiroshi Sugimoto and Tomoyuki Sakakida / New Material Reasearch Laboratory. Courtesy of artiste & Pentagram Stiftung Photo: Tadzio
2014年、「ヴェネツィア・ビエンナーレ 国際建築展」の時にヴェネツィアのサン・ジョルジョ・マッジョーレ島に設置し、話題になった杉本設計のガラスの茶室《聞鳥庵(もんどりあん)》が、〈大トリアノン宮殿〉から伸びるプラ・フォン池の中に設置されている。

マリー・アントワネットはロココ趣味の宮殿よりも、自ら望んで建てさせた「Maison de la Reine(王妃の家)」と呼ばれる田舎風の建物で暮らすことを望んだとも言われる。権勢と豪奢を知った上でたどり着いたところがそれなのか。そして、杉本はそんなことから、村田珠光が「藁屋に名馬を繋ぎたるがよし」と言い、また、千利休が侘び茶を完成させたことに連想が及んだらしい。王妃の清貧を思う時、その地にこの利休らから影響を受けた杉本のミニマルな茶室を設置してみたのは当然のなりゆきにも思える。
プレスプレビューの記者会見にて。左から、パレ・ド・トーキョー館長で本展キュレーターのジャン・ド・ロワジー氏、ヴェルサイユ現代美術アートプロジェクトキュレーターのアルフレッド・パックマン氏、ヴェルサイユ宮殿・博物館・国有地公施設館長のカトリーヌ・ペガール氏、現代美術作家の杉本博司氏、通訳。 photo_Yoshio Suzuki
記者会見で杉本自らが語っていたのだが、この展覧会は準備期間なんと4カ月で作ったとのこと。「ポートレート」シリーズや数理模型、茶室をこの地にまつわるストーリーに沿う形で見事に配置し、劇場の撮り下ろし新作を見せてくれるなど高度な展示を作り上げた。世界遺産であるヴェルサイユの建物や庭園という得難い空間。そこに斬り込むのは現代美術から始まり、建築、演劇領域での活動、能や茶の知識を備えた杉本。この組み合わせでしかあり得ないハイレベルで洗練された仕上がりの展覧会である。

『SUGIMOTO VERSAILLES – Surface of Revolution』

〜2019年2月17日。月曜休。