8点が一堂に並ぶ、話題の『フェルメール展』へ急げ!
現存する作品はわずか35点とも言われるフェルメール。貴重な作品がオランダ、ドイツ、アイルランド、アメリカなどから来日中です。なんと8点がひとつの部屋にずらりと並ぶという、日本初の試みも話題に。絶対に見逃せない展覧会です。
《ワイングラス》はフェルメールのキャリアの中期に描かれた作品。《マルタとマリアの家のキリスト》からぐっと進歩して、空間がしっかりと表現されている。この絵では男性が女性にワインを勧めているが、男性は飲んでいない。女性が手にするグラスはほとんど空になっていて、これからの恋の行く末を暗示する。画面左のステンドグラスには手綱を持つ女性がデザインされている。手綱を持つ、ということは欲望を抑えるといった意味だ。「節制に勤めよ」という教訓が危うい男女の恋模様と対照をなす。
《リュートを調弦する女》は、女性の謎めいた視線が印象的な一枚だ。彼女は窓の外にある何かを見ているのか、それとも単にそちらに顔を向けて音に集中しているのだろうか。画面には女性が座る椅子の他に、もう1脚の椅子があり、床にヴィオラ・ダ・ガンバと楽譜が描かれていることから、演奏者がもう1人いることを暗示する。フェルメールの時代には音楽は恋愛感情を高めるものであり、楽器は恋の象徴だった。不在の演奏者は彼女の恋人かもしれないと思うと、画面からさまざまなストーリーがあふれ出てくるように感じられる。
窓辺に向かって立ち、壁にかかった小さな鏡を見ながら身繕いをする《真珠の首飾りの女》は、「マイナスの美学」で作られた作品だ。背景の白い壁には、もともと地図が描かれていたのだが、フェルメールは途中でその地図を消してしまった。《リュートを調弦する女》もそうだけれど、フェルメールの絵には描き込みが少ない。アクセサリーや食器などの小道具も最小限だし、壁も白いままということがよくある。
当時のオランダでは一般家庭でも絵を買って壁にかけることが流行していた。また、こういった絵では仮に庶民の暮らしを描いていても、多少は“盛る”のが普通であり、実際より余分に絵や調度品を描いていることもよくある。フェルメールはあえてそれをせず、少ない要素で画面を構成している。余白にいろいろなものが読み取れる絵なのだ。
当時のオランダでは一般家庭でも絵を買って壁にかけることが流行していた。また、こういった絵では仮に庶民の暮らしを描いていても、多少は“盛る”のが普通であり、実際より余分に絵や調度品を描いていることもよくある。フェルメールはあえてそれをせず、少ない要素で画面を構成している。余白にいろいろなものが読み取れる絵なのだ。