鬼才・会田誠が都市の未来図を発表!|青野尚子の今週末見るべきアート | ページ 2 | カーサ ブルータス Casa BRUTUS

鬼才・会田誠が都市の未来図を発表!|青野尚子の今週末見るべきアート

時にエロやグロの混ざった作風で物議を醸す会田誠。率直に言ってお行儀がいいとはいえない彼が提案する都市の姿とは? 本人の解説も交え、驚きの都市計画を紹介します!

地下2階に降りると「何もやるな」と書かれたタテカンが出迎える。右は数ある遷都論の中でもほとんど誰も提案していない「北海道遷都論」。
展示はこの地下1階と、もうワンフロア、地下2階にある。会田いわく、「地下1階はフォーマル階で地下2階はカオス階」という構成なのだそう。地下1階でも充分カオスだが、その下には会田の言うとおり、もっと得体の知れないものがうごめいている。
地下2階の壁に描かれたグラフィック。大友克洋のマンガ「AKIRA」がインスピレーション源。
この階でのキーワードの一つは「スラム」。会田はどうしてもスラムに惹かれてしまうのだという。「コンクリートの隙間からしぶとく生えてくる雑草のような貧乏くささは、自分が大切だと思うイメージの一つ」なのだそう。
地下2階の展示風景。会田が言う通りのカオス。白いプラスチックの椅子は東南アジアでよく見かけるもの。
会田は新潟の郊外に生まれ、東京藝術大学に入学するため上京した。

「雑草は僕にとって東京のイメージであり、自画像のようなものなんです。田舎では雑草は目立たない。都会で、コンクリートやアスファルトで固めようとしても生えてくるから目立つ」
白い容器に植えられた雑草が並ぶインスタレーション。壁の英文は坂口安吾『日本文化私観』から引用した「京都の寺や奈良の仏像が全滅しても困らないが、電車が動かなくては困るのだ。」に続く一節。坂口安吾は“工場萌え”的なテキストも書いている。
そのスラムへの思いを、彼は「セカンド・フロアリズム」という言葉で表現した。彼はここで「快適なスラム」という自己矛盾をはらんだ概念を提唱している。展示室の一角には檄文のような『セカンド・フロアリズム宣言』草案が貼られている。
〈セカンド・フロアリズム宣言〉草案。基本的な安全性を確保した上で素人が勝手に作る「快適なスラム」についての提言がぎっしりと書かれている。
「(スラムは)かっこいいし おもしろいし いばってないし うつくしい」
「自然(災害)に対して抵抗力が弱い低所得者こそ、『人類の叡智を結集した高度なシステム』で守らなければならない」


そこで「不便・不快・危険」といった要素を改善し、「快適なスラム」を目指す、という趣旨だ。建物は基本的にセルフビルド、誰かが指導するのではなく、自発的に作られることを期待している。「セカンド・フロアリズム」という名称は建物を2階建て以下に制限する提案からつけられた。既存の建築家を含むさまざまな権威をあざやかに飛び越える、その提案は鼻で笑って通りすぎるにはあまりにももったいない。
左は《ネクタイ・ビル∞》。ネクタイには「地味で目立つのが嫌いなお父さんへのプレゼントにふさわしい柄」を選んだ。
誇大妄想的な都市計画案。外苑の絵画館前にピラミッド内部のような地下道を掘る計画。
地下2階の別のコーナーでは熱唱する会田誠の映像が。「ボイス、ボイス あんたの時代はよかった アーティストがピカピカのサギでいられた」と歌う。

このボイスとは、ヨーゼフ・ボイスのことだ。ヨーゼフ・ボイスは1986年に死去したドイツの現代アーティスト。ボイスはこの個展の裏テーマなのだと彼は言う。ヨーゼフ・ボイスは第二次世界大戦時、従軍していたときに撃墜され、墜落した先で現地の住民にラードやフェルトに包んでもらって助かった、というエピソードを繰り返し語り、それらを作品の素材にしていた。また自然保護や反核運動などの社会的な活動も行っている。日本でもカリスマ的な扱いを受けており、1984年の個展開催時に来日した際は熱狂的に迎えられた。

会田は社会派アーティストと目されたボイスについて熱唱する自らの姿を通して、アーティストと社会問題との関わりについて彼なりの態度を表明している。社会が抱える課題をどう解決するかは都市計画の重要な役割の一つだ。
《新宿城》。段ボール製の城を東京都庁の前に置き、路上生活者が引っ越してくるのを待ったが、その前に清掃局によって撤去された。1995年の作品。
自ら著書をものするほど筆が立つ会田だが、今回の個展では特に文字が多い。それは彼の渾身のメッセージだ。時間に余裕をもって鑑賞したい“読む”展覧会だ。
東京湾アクアラインの換気塔「風の塔」の改造案《ちくわ女》。「ちくわ女」は相原コージのマンガ「コージ苑」の名物キャラ。
《成田空港お土産品マグカップの思考実験》。お土産用のマグカップの絵柄から、ニューヨークのエンパイアステートビルのような観光客にアピールできるシンボルを考える。日本にも世界に誇れる巨大建造物が必要、との考えから生まれたもの。
《「風の塔」改良案:「考えない人」ジオラマ》。「風の塔」のもう一つの改良案。
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タテカンに描かれた都市計画シリーズ。《○×半島無人化計画》はエリアを区切って人間のいない、野生動物の楽園にしようというもの。
群馬県を巨大湖にするプラン。これは群馬県の人は怒るだろう。
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会田誠展「GROUND NO PLAN」

東京都港区北青山3-5-12
青山クリスタルビルB1・B2 〜2月24日。10時30分〜18時30分(金〜19時30分)。会期中無休。入場無料。

青野尚子

あおのなおこ  ライター。アート、建築関係を中心に活動。共著に「新・美術空間散歩」(日東書院本社)。西山芳一写真集「Under Construction」(マガジンハウス)などの編集を担当。