今すぐ行きたくなる、湯布院に誕生した隈研吾設計の小さな現代美術館。 | ページ 3 | カーサ ブルータス Casa BRUTUS

今すぐ行きたくなる、湯布院に誕生した隈研吾設計の小さな現代美術館。

行ってみたい温泉、また行きたい温泉としてしばしば話題になる大分県・湯布院。この地に小さいけれど、とても価値の高い美術館〈COMICO ART MUSEUM YUFUIN〉ができた。町のメインストリートからも近い場所。必見の建築と美術作品を紹介しよう。

〈GALLERY 2〉には杉本博司の《海景》シリーズが並ぶ。構図は同じ。しかし、昼、夜、晴天、霧など全部違う海。 photo_© NHN JAPAN Corp.
もう一方の展示室〈GALLERY 2〉にはやはり日本を代表する現代美術家である杉本博司の代表作《海景》シリーズが5点展示されている。杉本が1980年から制作しているこのシリーズ。画面上半分は空、下半分は海、あとはなにもない。古代の人間が見た風景と現代の我々が見られる同じ景色はあるだろうか。それをテーマにして、世界の海を撮影してきた。

〈COMICO ART MUSEUM YUFUIN〉の杉本作品コレクションには、シリーズ第1作目、1980年に撮ったカリブ海(ジャマイカ)もある。杉本はこれを撮影したとき、これは自分の心象風景だという手応えがあったという。
《CARIBBEAN SEA, JAMAICA》 1980年。銀塩写真。152.4✕182.2cm (framed)。 ©Hiroshi Sugimoto / Courtesy of Gallery Koyanagi
その後、現在に至るまで杉本は「海景」を撮り続けているが、この美術館ではカリブ海のほか、イオニア海、エーゲ海、カテガット海峡、スペリオル湖の静謐な海がそれぞれの違った表情を見せている。
《LAKE SUPERIOR, CASCADE RIVER》1995年。銀塩写真。152.4✕182.2cm (framed)。  ©Hiroshi Sugimoto / Courtesy of Gallery Koyanagi
ここにある5点の海は昼もあれば、夜もある。晴天もあれば霧の日もあった。

淡水湖であるスペリオル湖を撮影したときのこと。杉本によればこうだ。「湿気も違うし、いつでも薄い霧のようなものが漂っている。朝になって空が白んでくると普通は水平線が赤くなってきて、陽は出るけれどもそこではそうではなく、水蒸気が白くなって本当に空が真っ白になる。空全体が均一に白くなって夜が明けてくる。空が真っ白だから反射する水も白くなる」。

村上隆と杉本博司という現代を代表する二人のアーティスト。その二人の作品だけを常設展示(今後いろいろな展開もあるかもしれないが)する美術館というだけでユニークである。そもそもこの二人、六本木の森美術館で杉本は2005年、村上は2015年〜2016年大規模個展を開催したトップクラスのアーティストだ。世界中の美術館が彼らの作品を収集することを夢見ている。この小さな美術館は軽々と実現してしまった。二人の作家の真髄を凝縮する形で。

しかし、絵画と写真というばかりでなく、作風も作家として拠って立つところもまったく異なる村上と杉本。見る側、見せる側がどう折り合いをつけるか。それに対して、建築家・隈研吾が明確な回答を与えた。それは展示室から展示室に移ることはできないようにしたこと。隈は語る。「建物の中央に水盤を設けて、2つの展示室を直接に行き来することができないつくりです。あえて遠回りさせることで、美術館の外に広がる豊かな自然を様々な角度から感じられるようにしました」。

濃密な作品世界を堪能したあと、一度必ず展示室の外に出て、気分を鎮め、空気を吸い、そして再び鑑賞するというわけだ。
美術館の庭。ここを通って、展示室を移る。奥の建物は研修棟。
立地も、サイズも、コレクションも異例でありながら、美術ファンも注目するこの〈COMICO ART MUSEUM YUFUIN〉を作ったのは誰?という疑問が当然出てくるだろう。美術館名に冠された“COMICO”はNHN JAPANの事業の一つでWebコミック、マンガ、小説、映画などを提供する総合エンターテインメント・プラットフォーム。この美術館は芸術をより多くの人々と享有しうる文化的施設とすることを意図し、公開されている。

というわけで、収蔵作品、建築、庭園ともぜひ見てみたいところだ。福岡あたりからなら、美術館+日帰り温泉も可能。関西や関東からなら美術館+温泉一泊での充実の小旅行をお薦めする。
美術館のエントランス。ロゴなどのデザインは原研哉による。 © Mitsumasa Fujitsuka

〈COMICO ART MUSEUM YUFUIN〉

大分県由布市湯布院町川上2995-1
。JR久大本線 由布院駅、由布院駅前バスセンターから共に徒歩で約15分。駐車場なし。9時30分~17時30分(ツアー実施時間は9時40分~16時)。休館日は隔週月曜日(施設整備などにより休館日を変更の場合あり)。入場は日時指定のWeb予約・定員制で、ツアー形式により観覧する。入館料1,500円。