知れば知るほど背筋が凍る! 中野京子が選んだ、本当に“怖い絵”。 | ページ 2 | カーサ ブルータス Casa BRUTUS

知れば知るほど背筋が凍る! 中野京子が選んだ、本当に“怖い絵”。

2007年に出版されて以来、いずれもベストセラーとなった中野京子著『怖い絵』シリーズ。ページをめくるたびに背筋に冷たいものが走る。その「怖い絵」の世界観が展覧会に! 特別監修した中野さんにお話を聞きました。

ウォルター・リチャード・シッカート 《切り裂きジャックの寝室》(1906-07年 油彩・カンヴァス マンチェスター美術館蔵)(c)Manchester Art Gallery / Bridgeman Images 切り裂きジャックの真犯人としては他にヴィクトリア女王の孫クラレンス公や宮廷侍医、弁護士、外科医ら社会的地位の高い人の名も取り沙汰された。 
5人の娼婦を惨殺し、19世紀末のロンドンを震撼させた殺人鬼「切り裂きジャック」。犯行予告を新聞社に送りつけ、被害者を切り刻むという劇場型の猟奇的な犯罪はいまだ未解決だ。容疑者にはさまざまな説があるが、画家、ウォルター・シッカートはその一人。彼の描いた《切り裂きジャックの寝室》という絵も「怖い絵」展に出品されている。

シッカートが犯人として疑われた理由は、彼が切り裂きジャックに異常なほどの興味を示していること。

「この絵もジャックが住んでいたという噂のある部屋をわざわざ借りて、そこを描いているんです。室内は無人で窓やベッド、ドレッサーなどがあるだけなのに異様な雰囲気が漂います」(中野京子)

シッカート真犯人説はアメリカのベストセラー作家、パトリシア・コーンウェルらが唱えている。彼女は7億円という莫大な私費を投じ、切り裂きジャックの手紙の中でも犯人と警察しか知り得ない「秘密の暴露」が書かれた手紙の切手から検出されたDNAとシッカートのものとが一致すると発表、シッカートが犯人だと結論づけた。この後も新説が出されており、決してシッカートが真犯人だと決まったわけではないが、有力な説の一つとされている。

「シッカートはもともと俳優志望で劇団に入りました。頭が良くて自分の分はもちろん、他の俳優のセリフもすぐに覚えてしまい、しかもそれを何年も記憶しているんです。そのせいか代役を務めることが多くなり、画家に転向しました。変装が好きで、謎の失踪を繰り返すなどの奇行も目立ちます。彼はハンサムで3度結婚しているのですが、それもお金目当てだと言われています」(中野京子)

シッカートはジャックに執着していたと言ってもいいほどの共感を覚えていた。

「この絵も切り裂きジャックになりきって描いたかのようです」(中野京子)

シッカートが切り裂きジャックなのかどうかはわからないけれど、心の中にジャックと同じぐらい尋常ではない闇を抱えていたことは確かだろう。