青野尚子の「今週末見るべきアート」|杉本博司が考える人類の終末 | ページ 2 | カーサ ブルータス Casa BRUTUS

青野尚子の「今週末見るべきアート」|杉本博司が考える人類の終末

約2年間の改修を終えてぴかぴかになった東京都写真美術館。リニューアル・オープンおめでとう! という気分で中に入ると、そこには思いがけない廃墟が広がる。美術館の総合開館20周年記念でもある杉本博司の個展は「文明の終焉」がテーマだ。彼が考える人類の終末とは何か、杉本に聞いた。

〈今日 世界は死んだ もしかすると昨日かもしれない〉、18世紀フランスの建築家、クロード・ニコラ・ルドゥーの書籍。球体などを用いた幻想的な作風が特徴だ。パリでは複製が展示されたが、その後、杉本が原本を発見、東京ではオリジナル全4巻が揃って、たいへん貴重な展示となった。
「ここでの展示はパリで展示したものにこちらで集めたものを追加して、バージョンアップしています。主に、太平洋戦争の苦い記憶を示すものを増やしました。どうして我々はあの戦争に突き進んでしまったのか、海外でよく聞かれるのですが、うまく答えられたことがないのです。立花隆の『田中角栄研究―その金脈と人脈』が掲載された文藝春秋など、ジャーナリズムに関する資料も増やしていますね」と杉本博司は言う。
蝋人形館で撮った「最後の晩餐」が飾られた「比較宗教学者」のコーナー。2012年にハリケーン・サンディが襲来した際、杉本のニューヨークの地下スタジオにあった作品は水浸しになってしまった。同じ部屋には日本の歴代の天皇とローマ法王、それぞれの御尊影が並ぶ。後者はバチカンのお土産屋で購入したものだ。神も買うことができるかもしれない。
33に分かれたスペースはそれぞれ、杉本が考えた文明の終わりを告げる物語を現す。世界の終わりに建築家や理想主義者、ロボット工学者などさまざまな人々が、文明がいかに滅びたかを書き留めるという趣向だ。

「19世紀に起こった共産主義の失敗が明らかになった後は、人々の欲望の赴くまま今に至っている。このままでは破綻は免れない。この作品は『そうなってはいけない』という33の物語によって警鐘を鳴らすものです。私はアーティストなので、ものに語らせるという手法をとることにしました」