瀬戸内国際芸術祭2016「夏会期」新作レポート! | ページ 5 | カーサ ブルータス Casa BRUTUS

瀬戸内国際芸術祭2016「夏会期」新作レポート!

瀬戸内の夏をアートで楽しむ『瀬戸内国際芸術祭 2016』がいよいよ開幕しました。そこで、夏会期の新作の中で注目を紹介します!

豊島のクリスチャン・ボルタンスキー《ささやきの森》。木々の間から生えてきたかのような風鈴が風にあわせてかすかな音色を響かせる。「はかなさをテーマにした、穏やかな作品」とボルタンスキーは言う。
豊島ではクリスチャン・ボルタンスキーが2010年に制作した《心臓音のアーカイブ》に続いて《ささやきの森》という作品を作った。森の中にいくつも風鈴が吊されている。風鈴には短冊のようなプレートがついていて、観客が大切な人の名前を残すことができる。風が吹いて風鈴が鳴るたびに、名前を書いた人はその人のことを思い出すだろう。《ささやきの森》は心臓の音を記録して名前を残す《心臓音のアーカイブ》と密接に関係しているという。どちらも音によって誰かのことを記憶する、あるいは思い出すアートだ。

「名前を書くのは一人一人が唯一の存在であることを示すため。そして、死や忘れられることに対する抵抗や戦いを現している。その戦いにはたいてい負けてしまうのだけれど、でも巡礼の場をつくることが大切だと思う」
風鈴に下がったプレートに大切な人の名前を残すと、風でゆらゆらと揺れる。この《ささやきの森》は山道を少し登ったところにある。行く途中で耳にする風の音や鳥の声もこの作品の大切な要素なのだという。
この二つの作品は恒久設置作品だ。が、豊島でボルタンスキーのトークショーが開かれた際、《心臓音のアーカイブ》に父の心臓音を預けたという人が「百年後もそのまま保たれるのでしょうか」と聞いた。ボルタンスキーは次のように答えた。

「この二つの作品は恒久設置ということになっているけれど、日本にはパーマネントに存在するものはない。西洋ではたとえば聖骸布のようにあるものを聖なるものとして残そうとする。それに対して日本では伊勢神宮のように知の形で受けつぐ。式年遷宮では物は残らないけれど、音楽の楽譜のように建て方という知識は残る。私の作品も『ボルタンスキー作・演奏○○』というような形で残ってくれればうれしい」
《ささやきの森》豊島・唐櫃岡。9時30〜16時30分。火曜休(※祝日の場合は翌日休)。月曜が祝日の場合は火曜開館、翌水曜休。300円、プレート登録料5,000円。