鉄による豊かな表現を模索する彫刻家・稲葉友宏。その“空白”に込めた思いとは? | ページ 2 | カーサ ブルータス Casa BRUTUS

鉄による豊かな表現を模索する彫刻家・稲葉友宏。その“空白”に込めた思いとは?

彫刻の一部に形のない“空白”を取り込み、見た人の想像を掻き立てる。目に見えるものだけではない豊かな彫刻表現を求め、日々「鉄」という手強い相手と向き合っている彫刻家の稲葉友宏。現在、開催中の個展『THE STORIES THAT YOU SEE』の制作秘話や“空白”に込めた思いなどを、制作の拠点である栃木のアトリエで語っていただきました。

●地元・栃木のアトリエから生まれる作品

「個展中なので、最もガランとした状態。普段は作品がアトリエの入口付近までひしめき合っています」と稲葉さん。
これらの作品が生まれるのは、地元・栃木に置くアトリエ。日常的にスケッチしたメモを元に、まずはドローイングでイメージを起こすのだが、その手に迷いはない。筆圧によってできた線の太さの違いを表現できるよう、2.6mm~4mmの3本のワイヤーを使い分け、バーナーで熱を加えては手早く曲げる作業を繰り返していく。空白を取り込む場所を、どのように考えるのかも気になるところだ。
2000度を超えるバーナーを当てて、ワイヤーを自在に曲げていく。手が止まることなく、流れるように作業をする姿が印象的。
繊細な線を表現するため、ワイヤーを使い分け。ワイヤーの表面を溶かして面にする際は、完全なフラットにはせず、あえて線っぽさを残すのだという。
「基本は、シルエットで考えますね。ただ、ある部分を取り除くことで何の形なのか分からなくなるので、モチーフの研究が大切になってくる。例えば、鹿を題材にするなら、人が思い描いている鹿の印象を突き止めることが重要です。手がかりになるのはロゴやマークのような、記号化されたもの。その動物らしさが一番感じられる部分を意識的に残し、他をそぎ落としていきます」
稲葉さんにとってとても大切なメモから、スケッチを描く。「丁寧に書き込むのが苦手なんです」と笑う。
フレームを造作した状態。立体にして吟味し、このまま作品として完成させることもあれば、もう一度作り直すこともあるという。
ときに、スケッチだけでは読み切れないこともある。その場合はフレームだけをワイヤーで作り、360°確認しながら形を定めていくのだという。実は、このフレームを作る作業は制作の行程とは別に、《And a blank》という作品シリーズにもなっている。
感覚的に自由に作る《And a blank》シリーズは、稲葉のケーススタディのような存在にもなっている。
「《And a blank》は自由に作っている作品。“犬を作ろう”、“今日は鹿にしよう”とも、どう見せようとも考えず、ただただ目の前に見える線を追いかけています。だからこそ、冒険した線が作れる。僕にとって“立体クロッキー”のようなもので、感覚的に作るその行為自体が重要。そこで今までにない線、大胆な構成が生まれて、結果として大きな作品にも取り込んでいける。通常の制作と、立体クロッキーの両輪を走らせることで、作品づくりがより広がっていくのだと思っています」
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