ラジオ片手に温泉地を歩く。“見えないアート”体験とは? | ページ 3 | カーサ ブルータス Casa BRUTUS

ラジオ片手に温泉地を歩く。“見えないアート”体験とは?

ひとりの作家による個展形式で開かれる芸術祭「in BEPPU」。今年は梅田哲也が“見えないアート”をつくりました。場の見え方が変わってくるアートについて、作家本人に話を聞きました。

さびついた柱は緑の勢いにあらがうかのよう。
作品タイトルの《O(ゼロ)滞》について梅田は「作品タイトルは、必ずしも何かを説明するものではないこともある」と言う。

「タイトルが作品を象徴しているというよりは並列にあるもの、タイトル自体が彫刻のようなあり方が好きなんです。あまり意味だけに回収したくないという思いがある」
何もなさそうに見える山の中でも、ラジオから何かが聞こえてくることがある。
「O(ゼロ)」は穴のようにも見える。音が聞こえてくるスポットのひとつは白い煙を吐く火口だ。温泉のお湯を運ぶパイプにも穴がある。

「穴や、何かをつなぐものって昔から気になるんです。〈ブルーバード会館〉で上映している映画も、手前から奥へトンネルのように抜けていくようなイメージのつながりなんです」
かすかに残る、人が行き来した軌跡を追って進む。
踏み固められた落ち葉が地面を覆う。
ラジオにつないだヘッドホンに耳を澄まして歩いていくと、景色もいつもとは違って見えてくる。耳に、足元に神経を集中して移動するうちに自分の身体が普段とは違うバランスで構成されているようにも感じられてくる。〈別府ブルーバード会館〉で上映される映画には登場人物のひとり、森山未來が水中を移動していくシーンがある。記憶の海に潜り、穴の向こうに見える別の時空をのぞき込む。そんな奇妙な旅ができるアートだ。

梅田哲也 イン 別府

別府市内各所。〜2021年3月14日まで。火曜・水曜・木曜(祝日除く)休。作品鑑賞は全て予約制。公式サイトの予約フォームまたは電話にて要事前予約。TEL 0977 22 3560(NPO法人 BEPPU PROJECT/受付時間は月〜金曜9時〜18時。ただし祝日は休み)。

梅田哲也

うめだ てつや 建物の構造や周囲の環境から着想したサイトスペシフィックなインスタレーションを制作、パフォーマンス、音響のアートも発表している。2020年秋に行われた『さいたま国際芸術祭2020』の、取り壊しが決まっている旧大宮区役所で発表した大規模インスタレーション《O階》も話題になった。(ポートレイトは〈別府ブルーバード会館〉内にて2020年12月撮影)

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