肖像画が描かない、王と女王の怖い話。 | ページ 2 | カーサ ブルータス Casa BRUTUS

肖像画が描かない、王と女王の怖い話。

権力の座を奪ったり奪い返したり、正妻の座を追われたり。王や王室にはそんな抗争がつきものだ。とりすました肖像画の裏側にもそんなドラマが隠れている。『怖い絵』シリーズで知られるドイツ文学者・西洋文化史家の中野京子がナビゲートする『ロンドン・ナショナル・ポートレートギャラリー所蔵 KING&QUEEN展』でその“怖い歴史”を見てみよう。

《ジョージ4世》トーマス・ローレンス、1814年頃。メダル用に描かれたが、メダルのほうは鋳造されなかった。©National Portrait Gallery, London
《消化におびえる酒色にふけた人、ジョージ4世》ジェームズ・ギルレイ原画、ハンナ・ハンフリー出版、1792年7月2日出版。頭上にかかっているのは禁欲的な生活に切り替えて長生きしたヴェネチアの貴族、ルイージ・コルナロの肖像画。が、ジョージ4世は全く気にしていないようだ。©National Portrait Gallery, London
1820年に即位したジョージ4世の皇太子時代の肖像画は「イケメンバージョン」とそうでないものの2種類が並ぶ。イケメンのほうはトーマス・ローレンスという画家がメダル用に描いたもの。もう一枚はだらしない生活ぶりで悪名の高かった彼をありのままに、というよりもやや誇張して描いた風刺画だ。食料に事欠いた時代は男女ともに太っているほうが美徳とされたが、この時代にはすでにスリムなほうが理想とされていた。実際は「クジラ王子」とあざ笑われるほど太っていたジョージ4世を引き締まった顔つきで描いたローレンスは「本人そっくりだ」と言い訳したという。
《エリザベス2世》ドロシー・ウィルディング撮影、ベアトリス・ジョンソン彩色、1952年2月26日撮影。現在も王位にあるエリザベス2世は、エリザベス1世のイメージ戦略を意識していると言われる。©National Portrait Gallery, London
《ヴィクトリア女王》バーサ・ミュラー(ハインリッヒ・フォン・アンゲリの原作〈1899年〉に基づく)1900年。こちらは絵画だが、展覧会には手のひらサイズの写真も出品されている。ヴィクトリア女王は容易に複製できる写真が王室のイメージを広く伝播できることを意識していた。©National Portrait Gallery, London
会場の後半には現代のイギリス王室の写真が並ぶ。その中には離婚歴のあるシンプソン夫人と結婚するため王位を捨てたエドワード8世やダイアナ妃とチャールズ皇太子ら、複雑な関係を生きたキングやクイーン、プリンス、プリンセスも。ロイヤルには憧れるけれどやっぱり庶民でよかった、そんな気にもなってくる。

『ロンドン・ナショナル・ポートレートギャラリー所蔵 KING&QUEEN展』

〈上野の森美術館〉
東京都台東区上野公園1-2。TEL 03 5777 8600。10時~17時(金曜~20時[1日1日を除く]、最終入館は閉館の30分前まで)。10月10日〜2021年1月11日。会期中無休。観覧料1,800円。事前予約推奨。詳しくは公式サイトにてご確認を。

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