さようなら、クリスト。梱包するアーティスト、84歳で逝去。 | ページ 2 | カーサ ブルータス Casa BRUTUS

さようなら、クリスト。梱包するアーティスト、84歳で逝去。

建造物や自然を「梱包」してしまう壮大なインスタレーションで知られるクリスト&ジャンヌ=クロード。そのひとりであるクリストが、5月31日にニューヨークで亡くなった。クリスト&ジャンヌ=クロードの作品を振り返る。

1991年、茨城県北部に1340本の青い傘を立てた《アンブレラ》。平行してカリフォルニアにも1760本の黄色い傘が建てられた。 Photo: Wolfgang Volz © 1995 Christo
《アンブレラ》に実際に使用した布のサンプル(2016年に〈水戸芸術館 現代美術ギャラリー〉にて行われた『クリストとジャンヌ=クロード アンブレラ 日本=アメリカ合衆国 1984-91』会場にて)。クリストはプロジェクトの度に来場者に布のサンプルを配布していた。 photo_Takuya Neda
1995年にはベルリンの旧ドイツ国会議事堂を銀色の布で包む《梱包されたライヒスターク》が登場し、同年、彫刻部門で高松宮殿下記念世界文化賞を受賞。2016年、北イタリアのイゼオ湖に浮かぶ島と陸を黄色い布で覆われた3キロに渡る浮き橋で結ぶ《フローティング・ピア》では、16日間限定にも関わらず、100万人ほどが足を運んだ。
ベルリンの旧ドイツ国会議事堂を銀色の布で包む《梱包されたライヒスターク》1971年に構想され、1995年に2週間だけ実現した。 Photo: Wolfgang Volz © 1995 Christo
2016年6月18日から16日間、北イタリアのイゼオ湖の島と陸を黄色い布で覆われた3キロに渡る浮き橋で結んだ《フローティング・ピア》。会期後、全ての素材はリサイクルされた。 Photo: Wolfgang Volz © 2016 Christo
クリストの作品が構想から実現までかなりの時間を要すのは、その規模の壮大さとともに、スポンサーなどに頼らず、ドローイングやコラージュの販売で資金調達する方針を貫いてきたことにもある。設置許可を交渉するため自ら足を運んだ。拒絶されながらも何十年もかかって粘った。茨城のプロジェクトでは459人の地権者から許可を取り、6000杯ものお茶を飲んだとか。彼にとってその工程も含め、人と人をつなぐことが作品の意義であり、芸術なのだ。壮大なスケールと相反して、短期間で終わってしまう刹那的とも言える作品。それは多くの人の心に強烈なインパクトを残してきた。
2018年6月《ロンドン・マスタバ》を臨むクリスト。ボートの上から設置の指示を出していた、かくしゃくとした姿が偲ばれる。 photo_Haruko Tomioka
7506個のカラフルなドラム缶を積み上げた作品は、ひと夏のロンドンの思い出として、多くの人の心に刻まれた。 photo_Haruko Tomioka
2018年の《ロンドン・マスタバ》を取材した際、83歳にはとても見えないはつらつとした姿が印象的だったクリスト。「今、アート界はバーチャルで目に見えないものが多すぎる。わたしは具体的なものを見たいんです」と言っていたことを思い起こす。そして「具体的に見る」ことが一時的に叶わなくなったロックダウン下、ジャンヌ=クロードの待つ天に旅立っていった。

一方、1962年より構想されていたパリの凱旋門を布で包むという作品は、2021年9月18日より10月3日までの16日間、実現すると発表された。コロナ禍による延期で、悲願の作品を目にすることなく逝ったクリストだが、それはコロナウイルスの終息を祝すものとなり、「バーチャルではなく具体的なもの」の凱旋を象徴するものとなることを願うばかりだ。
パリの凱旋門をシルバーブルーの布と赤いロープで梱包するという作品のドローイング。建設資金はドローイングなどの売上金で賄われている。 L'Arc de Triomphe, Wrapped (Project for Paris) Place de l'Etoile – Charles de Gaulle Drawing 2019 in two parts Photo: André Grossmann © 2019 Christo

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