ブリューゲルの絵もひっぱり出して、ピーター・ドイグを紹介しよう。|鈴木芳雄「本と展覧会」 | ページ 2 | カーサ ブルータス Casa BRUTUS

ブリューゲルの絵もひっぱり出して、ピーター・ドイグを紹介しよう。|鈴木芳雄「本と展覧会」

描くのは目の前に広がる現実の風景ではなく、記憶の中のものや心に浮かんだ情景。だから、その絵はロマンティックで、ミステリアスだ。〈東京国立近代美術館〉で日本初の大規模個展が開催されているピーター・ドイグ。彼の絵はなぜ独特なのか、彼の絵になぜ魅了されるのか。どんな絵を参照し、どんな絵と対比されるのだろうか。

『ハピネス――アートに見る幸福への鍵』(森美術館)より。2003年、森美術館開館記念展で展示されたドイグ作品2点のうちのひとつだったが、日本語タイトルは「こぶ(OLIN MK IV Part II)」だった。
『ハピネス――アートに見る幸福への鍵』(森美術館)2003年。
同じ2003年、〈北海道立函館美術館〉と〈丸亀市猪熊弦一郎現代美術館〉で開催された「イン/プリント:ブリティッシュ・アートの新たなヴィジョン」では版画作品が展示されている。

〈森美術館〉に続いて、本格的に絵画作品が展示されるのは、2006年に大阪の〈国立国際美術館〉でのグループ展『エッセンシャル・ペインティング』である。マルレーネ・デュマス(オランダ/1953年〜)、アレックス・カッツ(アメリカ/1927年〜)、ローラ・オーエンズ(アメリカ/1970年〜)、エリザベス・ペイトン(アメリカ/1965年〜)、リュック・タイマンス(ベルギー/1958年〜)といった当代人気画家、合計13名が集められた展覧会だった。
『エッセンシャル・ペインティング』(国立国際美術館)2006年。
ドイグ自身、スコットランド、英国、カナダ、トリニダート・トバゴなどを縁の土地とし、しかも写生を元に描くわけではない彼について、以下のような解説が書かれている。

「現代人は訪れたことのない遠い国でも、イメージを膨らませることができるし、地理、政治経済、文化など、その国家の基本情報を得ることは、万人に開かれており、街の様子など視覚情報も難なく手に入る。こうした状況を顧みて、便利な時代になったと喜ぶこともできる。が、二次的情報を介して何もかもが、あまりに簡単に知ることができる、と嘆くこともできる。ドイグの絵画は、こうした豊かさの不幸に囲まれた現代人の心に忍び込み、魅了する不思議な力を持っている。」中西博之(『エッセンシャル・ペインティング』国立国際美術館/2006年)
『エッセンシャル・ペインティング』(国立国際美術館)より。空や地面を大きく取って、印象的な色で強調している点でこの2作品は共通している。
近年では、2014-15年に〈東京ステーションギャラリー〉ほかで展示、巡回した『プライベート・ユートピア|ここだけの場所―ブリティッシュ・カウンシル・コレクションにみる英国美術の現在』でも、絵画と版画が展示された。

「これらを単なる風景画と思ってはいけない。印象派主義的な色調や筆致の荒々しさが一切の地理的特徴を消し、個人的なスナップ写真や、記憶と夢の集積といったものを下地に描かれているのだ。その想像力とスケール感は映画のシーンのように大胆で、深い感動を与える。」
エイミー・ペティファー(『プライベート・ユートピア ここだけの場所』朝日新聞社/2014年)
『プライベート・ユートピア ここだけの場所』(朝日新聞社)より。左ページがペインティングで、右ページは版画だ。これだけだと寒々しい絵を描く人であるかのよう。
さて、今回の図録を見てみよう。
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