山口晃による新作カレ「エルメスの職人たち」制作秘話|石田潤のIn The Mode
画家、山口晃によるエルメスの新作カレがついに発売された。8年越しのプロジェクトとなった作品のテーマは“職人づくし”。山口がカレに描いたエルメスの工房探訪記を語る。
とはいえ、カレに表現されているのは、山口の目を通した職人たちの姿だ。建物は日本家屋へ、仕事着を着た職人たちは着物姿へと変換されている。
「フランスの工房を訪れた人の話を、日本の絵師が聞きかじって絵におこしたという体裁です。絵師は日本から出たことがないから、すべてジャパンナイズ。『東京タワーみてえのが建ってんだよ。エッフェル塔っていうんだよ。赤と白でなくて茶色が錆びたような妙な色でね』あ、落語調にしなくていいんですよね(笑)」。
「フランスの工房を訪れた人の話を、日本の絵師が聞きかじって絵におこしたという体裁です。絵師は日本から出たことがないから、すべてジャパンナイズ。『東京タワーみてえのが建ってんだよ。エッフェル塔っていうんだよ。赤と白でなくて茶色が錆びたような妙な色でね』あ、落語調にしなくていいんですよね(笑)」。
プリントから裁断、縫製を行うリヨンでは、インクの調合から手縫いでカレの縁をかがる手しごとまで、様々な工程をプロフェッショナルに行う職人たちに出会った。
「エルメスの工房では、いろいろな年代の人が働いているんです。何歳からでも働けるように育成プログラムがあって、見込みがあれば年齢にかかわらずちゃんと育ててくれる。みなさん、顔が上を向いていて、ある種の気概を感じました。良い風景をたくさん見せてもらいましたね」。
「エルメスの工房では、いろいろな年代の人が働いているんです。何歳からでも働けるように育成プログラムがあって、見込みがあれば年齢にかかわらずちゃんと育ててくれる。みなさん、顔が上を向いていて、ある種の気概を感じました。良い風景をたくさん見せてもらいましたね」。
そして旅の最後は、パリにあるエルメスの第一号店へ。今も建物内に残る馬具工房や、フォーブル・サントノーレ店の階上にあるミュゼ(美術館)を見学した。ミュゼは、エルメスの3代目社長であるエミール・エルメスの時代から収集してきた様々な品々を並べた部屋で、メゾンのクリエイターのインスピレーション源空間でもあるが、山口もまた、ここから大いに刺激を受けたという。
「ミュゼには、インスピレーションを高めるものが、脈絡なく、しかし整然と並んでいました。見ているだけでこっちのシナプシスが勝手につながる部屋で、ここがエルメスの中枢部なのだと思いました」。
「ミュゼには、インスピレーションを高めるものが、脈絡なく、しかし整然と並んでいました。見ているだけでこっちのシナプシスが勝手につながる部屋で、ここがエルメスの中枢部なのだと思いました」。
山口のカレは、カレの中にもうひとつのカレがあるという構造になっている。中央のカレには馬バイクが描かれ、周囲に工房とそこで働く職人たち、そして第1号店を中心としたパリの景色が描かれている。
「カレのスクエアは根源的な形である分、動きがありません。外枠はダイヤ型にし、少し不安定な転がりを作ることで、動きを作り出そうとしました。馬バイクは古いものと新しいものの両方を大事にするエルメスの象徴です。エンジン部分には中枢である本社ビルを描き、チャンバーにはHの形を取り入れました」
他にも、バッグの金具や香水瓶の蓋など、エルメスの製品にゆかりのあるモチーフをあちこちに忍ばせている。
「職人さんたちに喜んでもらえればというのが一番にあります。俺たちの仕事を見てくれる人がいるんだなと思っていただければ」と山口は述べる。
「カレのスクエアは根源的な形である分、動きがありません。外枠はダイヤ型にし、少し不安定な転がりを作ることで、動きを作り出そうとしました。馬バイクは古いものと新しいものの両方を大事にするエルメスの象徴です。エンジン部分には中枢である本社ビルを描き、チャンバーにはHの形を取り入れました」
他にも、バッグの金具や香水瓶の蓋など、エルメスの製品にゆかりのあるモチーフをあちこちに忍ばせている。
「職人さんたちに喜んでもらえればというのが一番にあります。俺たちの仕事を見てくれる人がいるんだなと思っていただければ」と山口は述べる。