瀬戸内国際芸術祭 2019〈本島・高見島〉新作レポート | ページ 2 | カーサ ブルータス Casa BRUTUS

瀬戸内国際芸術祭 2019〈本島・高見島〉新作レポート

『瀬戸内国際芸術祭 2019』の秋会期が開催中。香川県の直島や豊島、岡山県の犬島や宇野港に加えて、香川県中西部の4つの島が加わり、11の島と2つの港で作品が展示されている。今回は秋会期で初披露されている本島と高見島、それぞれの注目作を紹介していきたい。

●高見島

本島から高速船(会期中のみの運行)に乗って約30分で到着する高見島。島の玄関口である高見島港近くには、鎌田祥平と並木文音による《積みかさなる白と空白》が展示されている。まるで白い岩のような石膏の塊の中に入ると、高見島の廃屋に眠っていたという箪笥や文机、フライパンなどを形どったオブジェが設置されている。引き出しの中や机の上を見ると、島の外で見つけたという洋服や文房具が写し取られている。島の中と外、過去と現在を掛け合わせた作品だ。「待ち合わせ場所や休憩場所として、島の人たちと訪れる人たちをつなぐスポットになったら」と並木。
鎌田祥平と並木文音による《積みかさなる白と空白》。
作品の中には靴を履いたまま入る。「はじめは真っ白だった空間が人が訪れることによって足跡がつき、どんどん変わっていく様子も楽しみです」と語る並木文音と鎌田祥平。
パラノイドアンダーソンズの《Long Time No See》は、一軒の空き家を解体し、室内に残された大量の衣服や家電用品、食器、瓦などをほぼすべて使って家を再構築した。床板を再利用した木のブロックの上を歩いていくと足元には大量の皿が並べられていて、かつてここに住んでいた家族の団らんの風景を思い起こさせる。
瀬戸内海を目の前望む空き地に設置されたパラノイドアンダーソンズの作品《Long Time No See》。
大半が山に覆われている高見島では、傾斜を利用して家が建てられている。中には風化の進んだ家屋が多くあり、そうした建物が内包する長い時間に注目した作家も多い。村田のぞみは300年ほど前から建っている古民家を舞台に《まなうらの景色》を発表。「“まなうら” とはまぶたの裏のこと。目を閉じて、ここにどんな人が暮らし、どんな生活があったのかと思いを馳せました」。この家の中で流れていた時間の堆積を、0.45〜0.65mmの細いステンレス線をねじって泡のように積み重ねて表現。暗闇の中に張り巡らされた全長約30kmのステンレス線が幻想的な風景を描く。
古い日本家屋が内包する長い時間をステンレス線の泡を重ねて表現した村田のぞみ。
瀬戸内海を見下ろす高台の廃屋の中には、床一面に敷き詰められた大量の小石が中央に向かって高く盛り上がり、巨大な絵画が壁を覆っている。このインスタレーション《内在するモノたちへ、》を制作したのは山田愛。「この家を初めて訪れた時、庭には自分の背丈を越えるほど草が生えていました。その時、草と同じくらい長い根がこの下に生えているということも強く感じた。高見島にはあちこちにそういった “内在するモノ” の気配を感じられ、それらの存在と内から湧き上がるものを表現しました」という。屋外の穏やかな雰囲気と対局をなす神秘的な室内は、島の内部や自分自身の内側とつながっているような感覚を味わう。
高見島の海岸で収集した石を床いっぱいに敷き詰め、高さ3mの石の塔を誕生させた山田愛《内在するモノたちへ、》。
本島は泊・甲生地区と笠島地区の2つの地区で作品を展示している。バスの本数は少ないのでぜひレンタサイクルを利用してほしい。高見島は港周辺作品が集中していて徒歩で回ることができるが、坂道も多いので歩きやすい靴で。秋会期は本島、高見島以外に粟島、伊吹島でも新作が展示されている。芸術祭開催中、それぞれの島をつなぐフェリーが特別に運行しているので島巡りもしやすい。夏の暑さが和らぎ、心地のいい秋の瀬戸内でアートを堪能してみては。

『瀬戸内国際芸術祭 2019』

秋会期は11月4日まで。開催地は、直島、豊島、女木島、男木島、小豆島、大島、犬島、本島、高見島、粟島、伊吹島、高松港周辺、宇野港周辺。会期限定パスポートは4,000円(一般)、2,500円(16〜18歳)。15歳以下は鑑賞無料(一部作品、施設を除く)。

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