神戸に潜む亡霊たちを探す芸術祭へ|青野尚子の今週末見るべきアート | ページ 3 | カーサ ブルータス Casa BRUTUS

神戸に潜む亡霊たちを探す芸術祭へ|青野尚子の今週末見るべきアート

特に変わったところもなさそうな街の中で、建物や部屋を丸ごとアートにした空間に潜入する。海の上から野外劇を見る。そんな超個性的なアート・プロジェクトが神戸で始まりました。かなり強烈な体験ができるアートです。

【第6留】「私邸1」で行われるパフォーマンス《喪失》。散らかった、典型的な若い(?)男性の部屋が再現されている。
【第6留】「私邸1」1階。日本にはよくあるコンパクトな家屋の一室。ここでも予想外のパフォーマンスが行われる。
第5留の「神戸アートビレッジセンター」では《自己消費される生産》と題して過去作品の映像が上映されているのだが、所在地が明らかにされていない第6留「私邸1」と第7留「私邸2」への集合場所になっている。第6留「私邸1」には《自己消費される行為》と《喪失》というタイトルの作品があり、期間中、週末を中心に1日数回、他者の日常を覗き見るようなパフォーマンスが行われる。生身の身体がつきつける“わけのわからなさ”に観客はたじろぐ。
【第7留】グレゴール・シュナイダー《恍惚》の一角。住居として使われている小さなビルの一室にパチンコ台が並ぶ。
【第7留】グレゴール・シュナイダー《恍惚》の一角。パチンコ屋の事務所のような光景。
「私邸2」の《恍惚》も不可解な空間だ。やかましく点滅するパチンコ台で埋め尽くされた部屋には、人が寝泊まりしている痕跡が残る。
【第8留】《住居の暗部》がある「神戸市立兵庫荘」。こちらも取り壊しが決まっている。
第8留《住居の暗部》がある「神戸市立兵庫荘」は低所得労働者向けの一時宿泊所だった場所。第3留の「旧兵庫県立健康生活科学研究所」と同じく最近まで使われていたが、廃止となり、取り壊しを待っている。
【第8留】グレゴール・シュナイダー《住居の暗部》。ラウンジのテーブルには囲碁セットが。
【第8留】グレゴール・シュナイダー《住居の暗部》。居室の二段ベッドに残された私物も黒く塗られている。
建物のごく事務的なドアを開けると漆黒の闇に包まれる。入口で渡される小さな懐中電灯を頼りに進むとそこにあるものがすべて、黒一色で塗りつぶされているのがわかる。壁や床はもちろんのこと、椅子や机、二段ベッドに置きっ放しの布団や瓶、缶まで真っ黒だ。それらは最近までそこに寝泊まりしていた人が残していったもの。当人はどこかに行ってしまってもういない。消えてしまった人の体温だけが残っているような、非現実的な感覚に襲われる。

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