ポーラ美術館で時空を超えたアートが響きあう!|青野尚子の今週末見るべきアート | ページ 2 | カーサ ブルータス Casa BRUTUS

ポーラ美術館で時空を超えたアートが響きあう!|青野尚子の今週末見るべきアート

箱根の森の中にある〈ポーラ美術館〉で、時を超えたアートが出合う展覧会が開かれています。12組の現代アーティストとポーラ美術館のコレクションなどが響き合う『シンコペーション』展は美術史の新しい読み方も楽しめます。

(右)ヴォルフガング・ティルマンス《ファルテンヴェルフ(襞〈スカイライト〉)》2009年。
中央/エドゥアール・マネ《サラマンカの学生たち》(1860年)、両側はヴォルフガング・ティルマンス。
(右)ヴォルフガング・ティルマンス《ファルテンヴェルフ(襞〈スカイライト〉)》2009年。
中央/エドゥアール・マネ《サラマンカの学生たち》(1860年)、両側はヴォルフガング・ティルマンス。
マネの《サマランカの学生たち》とともに並ぶのはヴォルフガング・ティルマンスの写真。ペットボトルに活けた花、木漏れ日のあたる男性、タペストリーの一部と思しきもの、どれもありふれた日常の一コマだ。《サマランカの学生たち》は草むらの中の碑文を読んだ人物が財宝を発見するというストーリー。ティルマンスとマネの作品は、何気なく見える日々の情景に幸せは潜んでいることを感じさせる。
中央/アリシア・クワデ《まなざしの間で》2018年。©Alicja Kwade, Courtesy of KöNIG GALERIE, Berlin / London and 303 Gallery, New York 鏡とガラスの迷宮のような作品。右/サルバドール・ダリ《姿の見えない眠る人、馬、獅子》
鏡に映っているはずの自分が見えない。かと思うと、合わせ鏡の原理で無限に続いていくかに見える空間も。アリシア・クワデ《まなざしの間で》は鏡とガラスを組み合わせたトリッキーな作品だ。そこにダリの偏執狂的な絵画が取り合わされる。画面中央に描かれた奇妙な物体が女性のようにも、馬かライオンのようにも見える絵だ。インスタレーションと絵画、異なる手法で空間や物体の認識を歪ませる。
アブデルカデル・バンシャンマ《ボディ・オブ・ゴースト》2019年。©Abdelkader Benchamma, Courtesy of Galerie Templon, Paris 褶曲する地層のようにも、流水のようにも見えるインスタレーション。
ギュスターヴ・クールベ《岩のある風景》。クールベは故郷の風景を愛していた。
アブデルカデル・バンシャンマ《ボディ・オブ・ゴースト》2019年。©Abdelkader Benchamma, Courtesy of Galerie Templon, Paris 褶曲する地層のようにも、流水のようにも見えるインスタレーション。
ギュスターヴ・クールベ《岩のある風景》。クールベは故郷の風景を愛していた。
黒のインクによるドローイングを制作しているアブデルカデル・バンシャンマは初めてインスタレーションに挑戦した。彼が描いているのは想像上の風景だ。地層のようにも、流れる水のようにも感じられる。そこに、ギュスターヴ・クールベの《岩のある風景》が一緒に展示されている。奇妙な岩が大地からすっくと生えているという光景だ。クールベは地殻変動によって生まれた岩山や、でこぼこした地形に興味を持っていた。日本でも山や奇岩を聖なるものとする原始宗教がある。
「日本の神社や墓、縄や紙の使い方に興味を持った」とバンシャンマは言う。大地のエネルギーをあがめる素朴な念からさまざまな様相の作品が生まれる。
(左から額縁入りの作品)ポール・セザンヌ《アルルカン》(1888〜1890年)、パブロ・ピカソ《裸婦》(1909年)《母子像》(1921年)が渡辺豊の作品と一緒にインスタレーションされている。
渡辺豊のインスタレーション。セザンヌ、ピカソ、レオナール・フジタ(藤田嗣治)の作品と彼の作品が組み合わされている。
(左から額縁入りの作品)ポール・セザンヌ《アルルカン》(1888〜1890年)、パブロ・ピカソ《裸婦》(1909年)《母子像》(1921年)が渡辺豊の作品と一緒にインスタレーションされている。
渡辺豊のインスタレーション。セザンヌ、ピカソ、レオナール・フジタ(藤田嗣治)の作品と彼の作品が組み合わされている。
壁一面にたくさんの絵画がかけられた一部屋は、画家の渡辺豊とポール・セザンヌ、パブロ・ピカソ、レオナール・フジタ(藤田嗣治)らの作品を組み合わせたもの。渡辺は彼ら先達の名前やモデルたちの名前をインターネットで検索し、そのイメージを断片化して組み合わせた。ピカソのキュビスムを思わせる渡辺の作品をよく見ると、並べてかけられているフジタやセザンヌの絵画がレイヤーの向こうに隠れているようにも思える。渡辺が独自に進化させたポートレイトの最新形だ。
中央にパブロ・ピカソ《新聞とグラスとタバコの箱》(1921年)。磯谷博史作品のうち、後ろの壁の左から2番目の作品は手のひらに世界一小さいコインを押し付けて五輪のマークにしたもの。オリンピックとお金の関係などがテーマになっている。
セピア色のモノクロームの写真が、各辺によって違う色で塗り分けられた額縁に収められている。額の色は写真に写ったものの一部から抜き出したものだ。磯谷博史は、渡辺豊とは違う方法論でピカソにオマージュを捧げている。異なる視点から見た景色を組み合わせたピカソの絵と、色彩を写真から額へ異動させ、その両者を組み合わせた磯谷の作品が時間を越えて出合う。