ふわふわの子犬が遊ぶ芦雪の絵巻|ニッポンのお宝、お蔵出し | ページ 2 | カーサ ブルータス Casa BRUTUS

ふわふわの子犬が遊ぶ芦雪の絵巻|ニッポンのお宝、お蔵出し

円山応挙が描いて一躍人気になった「もふもふわんこ」。その系譜を忠実に受けついだのが弟子の長沢芦雪です。犬だけでなく亀や雀、鯉もかわいい絵巻をご紹介します。

《花鳥遊魚図巻》長沢芦雪筆(部分)。植物の茎や蔓は淡い墨で一気に描かれている。
ここで登場する犬は全部で11匹。白い犬や、白地に黒のブチがはいった犬たちは集団で戯れている。黒地に、首や頭の後ろが白くなった犬はこちらに背を向けて座っている。ちょっと笑っているような口元、つぶらな瞳、後ろ足を投げ出して座るポーズなどは師匠ゆずりだ。ころころとよく動く犬の姿態がよくとらえられている。
《花鳥遊魚図巻》長沢芦雪筆(部分)。
犬の脇には竹が描かれている。この他の絵にも犬と竹はセットで描かれることがよくある。これは竹冠に犬と書くと「笑」という字に見えることから「一笑図」と呼ばれ、吉祥として喜ばれた画題だ。一匹だけ離れている後ろ向きの黒い犬は芦雪の絵にはよく登場する。美術史家の今橋理子は「黒い犬」を合わせると「黙」という字になることを指摘。「黙」には黙る、静かという意味の他に「無し」という意味もある。有名な禅問答「犬に仏性があるか否か」という問いに対して趙州禅師が「無」と答えた、その問答が背景にあるという。
《花鳥遊魚図巻》長沢芦雪筆(部分)。岩にとまった正面向きの雀に目がいく。椿の花びらの濃淡もていねいに描かれる。
奇想の絵師にも数えられる芦雪は謎の多い画家だ。武士の家に生まれるがどういうわけか別の姓を名乗り、円山応挙に入門、上品で精緻な師のスタイルを受け継ぐ。和歌山県の無量寺から応挙が依頼を受けた際、多忙な師にかわって虎と龍の襖絵を描くが、このときには応挙がいる京都から離れたせいか奇想の本領を発揮、勢いある筆致で描いている。

その他、切手大の大きさに五百羅漢を描き込んだ絵なども有名だ。拡大しないと人物なのかどうかわからない細かさでぎっしりと羅漢が描かれている。46歳で死去したときは毒殺説まで流れた。その才能に嫉妬した誰かが殺めたのだ、というのだ。おそらく急病か事故だと思われるが、そんな話が出ること自体、当時から芦雪が注目されていたことがわかる。

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