トム・サックスの“ティーセレモニー”展、東京を席巻中! | ページ 2 | カーサ ブルータス Casa BRUTUS

トム・サックスの“ティーセレモニー”展、東京を席巻中!

〈東京オペラシティ アートギャラリー〉で始まった現代美術家トム・サックスの展覧会が話題を呼んでいる。身近で簡素な素材を駆使し、ユニークな視点で茶の湯を捉え直した展覧会をリポートします。

水が循環する池には、トムからの指定で丸々と太った赤い鯉1匹、その他10数匹の黒鯉が泳ぐ。奥のディスプレイパネルには、トムにとっての象徴的かつスタンダードな素材であるシンダーブロック(穴の開いた軽量コンクリートブロック)をプライウッドで模した作品が映し出される。奥右は《Sawhaus》。これは炉中の炭を作るために木材をカットする「木挽き台」だ。 photo_Tadashi Ono
コンクリートを模したプライウッドの壁《Tadao Ando Wall》に隔てられた先は「Inner Garden(内露地)」となる。桶が添えられたつくばい、松の盆栽、石塔、飛び石など茶庭を構成する要素がすべてトムによって解釈し直され、ユニークな作品となっている。飛び石に導かれた先には、ConEd柵と断熱材とトタン板を主材料として作られた四畳半茶室と、それに付随する水屋(=茶会の亭主が準備を整える場所)が展示されている。

庭や茶室に備わっているさまざまなアイテムを一つひとつ、オマージュを込めてなぞらえているのが、わかるだろうか? パロディの元となる本物を知らなければ、その面白さに気づけないかもしれない。観ている側の日本人としての素養や茶の湯にまつわる知識を試される展示でもある。あり合わせの身近な素材を寄せ集めて茶室を構成しているところなど、まさに数寄屋の精神を突いているとさえ感じさせる。

利休が竹筒を花器に見立てたことはマルセル・デュシャンが小便器を《泉》という作品にするより500年以上前に行われたアプロプリエーション・アートだったと、トム自身が展覧会図録の中で述べていることと、トムが自作を通して呈示していることは地続きなのだ(筆者注:正確には300年以上前)。しかし茶の湯の知識がなくても、この徹底したこだわりと、手作り感満載の作品の数々には思わず笑わされたり、驚いたり、楽しい展示になっている。
《Bonsai》はブロンズ鋳造する前の状態の作品。プライウッドとエポキシ樹脂などで作られた《Tobi-ishi》に導かれて茶室へ。茶室の前には赤い《Tome-ishi》が。もちろん本物の茶庭に用いられる「留め石」のコピー。 photo_Housekeeper
手桶と柄杓が添えられた《Tsukubai》(つくばい)、その後ろに《Ishidoro》(石灯篭)。奥には《Okumachiai》(奥待合)が見える。 photo_Housekeeper
NASAのロゴ入り茶碗に抹茶と電気ジャーポットの湯を注ぎ、マキタ社製電気モーターに取り付けた茶筅で電動攪拌し、ゲストへ供する。ちなみに出されるお菓子はなんと「オレオ・クッキー」と「PETZ」! 茶の湯のエレメントの一つ一つがトム独自のフィルターを通して再解釈され、細部までオマージュとウイットを込めた懲りように驚かされたり、くすりと笑ったり。
茶室内。スポーツ競技用ショットクロックは、点茶前の30秒の瞑想をカウントする。床の間にはモハメッド・アリとその格言を描いたトム直筆の掛軸と、シンダーブロックの作品。床脇のすり上げ戸を開けると、トムおなじみの油性ペン「Sharpie Pen」がずらり。茶会後の客の記帳に使われる。 photo_Housekeeper
にじり口の左上にショットガンが掛かっているのが見えるだろうか? 利休が茶室内での身分対等を唱え、「刀掛け」というラックを設け、そこへ刀を預けて丸腰で入室することを武士に強いたという話からヒントを得ている。 photo_Housekeeper

AIがあなたにおすすめ

※過去の記事も表示されます