日本とフランス、2つの“春画”を見比べてみよう|青野尚子の今週末見るべきアート | ページ 2 | カーサ ブルータス Casa BRUTUS

日本とフランス、2つの“春画”を見比べてみよう|青野尚子の今週末見るべきアート

観ていると身も心もぽかぽかしてくる春画。江戸時代の春画と、現代の春画とでも言うべきフランスのアーティストによる写真が並ぶ展覧会が開かれています。日仏それぞれの愛の形を見てみましょう。

蛸に唇を吸われる海女。周囲にはびっしりと「チュッチュッ」といったオノマトペが書かれている。葛飾北斎《喜能会之故真通》(部分)文化11年(1814)、浦上満氏蔵。
蛸と女性がむつみ合う『喜能会之故真通(きのえのこまつ)』で有名な葛飾北斎は、実はそれほど多くの春画を手がけたわけではない。展覧会には画面一杯にからみあう男女の背景にびっしりと文章が書き込まれた北斎独特の春画と、さまざまな性道具を描いたものが並ぶ。鳥文斎栄之は旗本の当主であり、浮世絵師だった人物。金地に赤い着物の柄があざやかな肉筆春画には艶っぽさ、華やかさが漂う。
江戸時代、源氏物語にならって「今源氏」と呼ばれた色男たちの恋模様を描く。<肉筆> 鳥文斎栄之《源氏物語春画巻》(部分) 寛政(1789〜1801)頃、浦上満氏蔵。
浦上氏は今回の展覧会に「品のある」春画を選んだ。「トップ5の絵師による、トップ中のトップの作品です」という。

繊細な線、鮮やかな色が残る画面、絵師それぞれの個性が感じられる構図は現在残る他の浮世絵や肉筆浮世絵と比べてもひけをとらない。

これらの春画とともに自作を展示しているのはフランス出身のピエール・セルネ。アーティストであり、世界最大規模のアートのデータベース「artnet.com」を設立するなどビジネスマンとしての顔も持つ。彼の写真は色鮮やかな春画とは対照的なモノクロームの世界だ。これはLGBTを含むカップルの姿態をスクリーン越しのシルエットでとらえたもの。

「画面を見ただけではどちらが男性でどちらが女性かということはわかりにくい。私はこの作品に人間はみな同じ、というメッセージを込めています。同時に他者との違いに対してオープンに、かつ受容性を持つべきだとも考えています」(ピエール・セルネ)
セルネが春画を初めて見たのは1980年代のニューヨーク、オークションでのことだそう。Kaitlin & John, 2015 © SP2X
「面白い、楽しい、生き生きしている。その印象は今も残っています」。春画を初めて見たときの印象をセルネはこう言う。Kaitlin & John, 2015 © SP2X
日本文化に興味を持つようになったのは数寄屋建築がきっかけだった。日本の古建築に見る内外の関係性に特に惹かれたという。Kaitlin & John, 2016 © SP2X
セルネが春画を初めて見たのは1980年代のニューヨーク、オークションでのことだそう。Kaitlin & John, 2015 © SP2X
「面白い、楽しい、生き生きしている。その印象は今も残っています」。春画を初めて見たときの印象をセルネはこう言う。Kaitlin & John, 2015 © SP2X
日本文化に興味を持つようになったのは数寄屋建築がきっかけだった。日本の古建築に見る内外の関係性に特に惹かれたという。Kaitlin & John, 2016 © SP2X
セルネは江戸末期・明治時代の日本を撮った写真も集めている。Wei, 2010 © SP2X
「僕の作品は春画へのオマージュでもある」(セルネ)Kaitlin & John, 2015 © SP2X
「日本でももっと春画が評価されるべきだと思います」(セルネ)Yumiko & Ana, 2017 © SP2X
セルネは江戸末期・明治時代の日本を撮った写真も集めている。Wei, 2010 © SP2X
「僕の作品は春画へのオマージュでもある」(セルネ)Kaitlin & John, 2015 © SP2X
「日本でももっと春画が評価されるべきだと思います」(セルネ)Yumiko & Ana, 2017 © SP2X
愛し合う2人のシルエットだということがわかると、見てはいけないものをのぞき見ているような気持ちにもなる。シンプルなモノクロームの画面が見る者の心情をあぶり出す。日本とフランス、江戸時代と現代、カラフルな春画と白黒のセルネの作品、対立しながらも溶け合う2つの要素が、男女をはじめとする人間のさまざまな関係性を暗示する展覧会だ。
会場ではところどころに丸窓が開けられて、中を覗き見ているような気持ちに。
繊細な浮世絵は前期・後期で展示替えされる。
会場ではところどころに丸窓が開けられて、中を覗き見ているような気持ちに。
繊細な浮世絵は前期・後期で展示替えされる。

『ピエール セルネ & 春画』

〈シャネル・ネクサス・ホール〉東京都中央区銀座3-5-3 シャネル銀座ビルディング4階。3月29日〜4月7日(後期)。12時〜19時30分。入場無料。TEL 03 3779 4001。

青野尚子

あおのなおこ  ライター。アート、建築関係を中心に活動。共著に「新・美術空間散歩」(日東書院本社)。西山芳一写真集「Under Construction」(マガジンハウス)などの編集を担当。

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