ル・コルビュジエの絵画を、彼の設計した〈国立西洋美術館〉で観る。 | ページ 2 | カーサ ブルータス Casa BRUTUS

ル・コルビュジエの絵画を、彼の設計した〈国立西洋美術館〉で観る。

ル・コルビュジエの建築で彼の絵画や家具を見る。ありそうで実はなかなかなかったチャンスがやってきます。彼が日本に唯一残した建築〈国立西洋美術館〉で、世界遺産登録後初のル・コルビュジエ展が開かれます!

そもそもル・コルビュジエのキャリアは美術界とのつながりから始まった。1917年、パリに拠点を定めたシャルル=エドゥアール・ジャンヌレ(後のル・コルビュジエ)は画家、アメデ・オザンファンとともにスイス人の銀行家、ラウル・ラ・ロシュのためにオークションでの絵画の購入に協力する。彼はラ・ロシュにそのコレクションと一体となるような住宅をつくることを提案。それがパリの〈ラ・ロシュ=ジャンヌレ邸〉だ。
面白いのは彼が、「ここには絵画などを飾らないように」といった場所を指定していること。あるときオザンファンが黙って「飾ってはいけない」としたところに勝手に絵を置いてしまう。するとル・コルビュジエは激怒し、「その場所は建築の純粋な空間なのに」という手紙を書く。温厚なラ・ロシュは画家と建築家の板挟みになってしまい、ル・コルビュジエに「私には画家に対する責任があるのに、あなたは“建築の詩”を作ってしまった。一体どちらが悪いのでしょう」という返事を送っている。
ル・コルビュジエの“横暴”はこれだけではない。今回の展覧会に出品される彫刻家、ジャック・リプシッツの家も彼が手がけているのだが、自作のレリーフを置きたい、というリプシッツの申し出に大反対し、後にリプシッツが設置したレリーフを彼の留守中に撤去してしまった。後にル・コルビュジエがデザイナー、アイリーン・グレイの別荘に勝手に壁画を描き、グレイを激怒させたエピソードを思うとなんて傲慢なのだろう、とあきれてしまう。

ル・コルビュジエは〈国立西洋美術館〉にも1階の「19世紀ホール」に写真による壁面装飾を提案している。エッフェル塔や鉄橋など、20世紀を象徴する写真のコラージュだ。時間が足りなかったこともあってここでは実現しなかったが、〈スイス学生会館〉にはカラフルな壁画とともに写真壁画が残る。「もし今、ル・コルビュジエが生きていたら映像を投影したでしょうね」と村上さんは言う。現在「19世紀ホール」には彫刻が展示されているが、壁画があったらちょっと使いにくいものになっていたかもしれない。そう考えるとル・コルビュジエには悪いが実現しなくてよかった、と思ってしまう。
〈国立西洋美術館〉では普段から建築ツアーを行っているが、この展覧会にあわせて3月3日から5月19日の間は「特別建築ツアー」を行う。通常の建築ツアーには含まれない旧館長室が見学できるほか、出品作にも触れながらル・コルビュジエを紹介する。〈国立西洋美術館〉にはピロティやスロープ、トップライトや吹き抜けといったル・コルビュジエならではの建築言語が随所に見られる。彼の絵画と建築の関係性を、彼の空間で見ることができる貴重な展覧会だ。

ル・コルビュジエ 絵画から建築へ―ピュリスムの時代

〈国立西洋美術館〉
東京都台東区上野公園7-7。2月19日〜5月19日。9時30分~17時30分(金曜、土曜は20時まで)。月曜(ただし3月25日、4月29日、5月6日は開館)、5月7日休。TEL 03 5777 8600。1,600円。