〈RCRアーキテクツ〉の個展が開催中、夢の「ラ・ヴィラ」とは? | ページ 3 | カーサ ブルータス Casa BRUTUS

〈RCRアーキテクツ〉の個展が開催中、夢の「ラ・ヴィラ」とは?

2017年にプリツカー賞を受賞し、一躍時の人となった〈RCRアーキテクツ〉。それまでは知る人ぞ知る存在だったけれど、独特の詩的な建築にみんな惹きつけられてしまいました。〈TOTOギャラリー・間〉で開かれている個展では、模型だけでなく絵や不思議な曼荼羅のようなものが並びます。彼らが何を作ろうとしているのか、来日したカルマ・ピジェム、ラモン・ヴィラルタに聞きました。

《書かれた、そして描かれた風景》。水彩画を描いた吉野の和紙がゆらゆらと揺れるインスタレーション。
展覧会場には抽象的な絵が描かれた和紙によるインスタレーションも展示されている。こちらも吉野で漉いた和紙だ。天井から吊された和紙はその間に立った観客が動くとゆっくりと揺れる。

「このインスタレーションは吉野の森での体験を再現したもの。これは中に入るための絵です。観客もその一部になって、二次元の絵を見るのではなく、絵で作られた空間を感じてほしい」
奥の壁に掛けられたモニタには代表作6つと、進行中のプロジェクトが映し出される。
彼らは吉野でも「ラ・ヴィラ」でも、森では「神々しい、敬虔な気持ちになった」と語る。

「森はさまざまな生命が助け合いながら存在する大きな複合体です。平穏で生命力に満ちていて、多彩な匂いがする。独特の湿気もあります。季節ごとに違う見え方をするのはもちろんのこと、一日の中でも朝・昼・晩と姿を変えて、決して同じ光景が現れることはない。無限の豊かさを内包しているのです。森は尽きることのないインスピレーションの源です。そのインスピレーションを吉野の和紙で表現しました。この展覧会も『ラ・ヴィラ』もたくさんの人の協力で多くの人の手によってできている、その複雑性をこの抽象的な表現で伝えたいと思ったのです」
吉野の大工の加工場での一コマ。よく手入れされた鉋(かんな)で削られた吉野杉はなめらかな仕上げ。会場で上映されている映像作品『吉野の森 ラ・ヴィラの森』(制作:鈴木久雄、ジュリア・デ・バイェ)より。
彼らは、吉野の職人とスペインの職人はそれぞれ感性も違えば道具も違う、とも指摘する。

「互いに異なる歴史があるから、違う智恵が蓄積されている。どちらがいい、悪いというものではなくて、それらを融合させたらどうだろう、と思いました。〈紙のパヴィリオン〉にも『ほぞ』(溝)を切って木材を組み合わせる、日本の古建築に使われていた技術を応用したところもありますが、一方でボルトなど近代の技術も使っている。伝統と現代の技術のどちらか一つというのではなくて、バランスをとることが重要なんです。同様に日本では集団主義で、欧米は個人主義ともよく言われますが、どちらがいいということではなく、バランスの問題だと思います」
『RCRアーキテクツ展 夢のジオグラフィー』会場風景。
展覧会には「夢のジオグラフィー」というタイトルがついている。彼らは「ラ・ヴィラ」が前例のないプロジェクトだからこそ、「夢」から始まりそこから現実を育てていくことが必要、と考えているようだ。

「『ラ・ヴィラ』では現代建築が失ってしまった身体的なもの、建築の価値を取り戻す実験をしたい。広い意味で、現代建築に影響を及ぼすものになるといい、とも考えています」

「ラ・ヴィラ」にはフィクショナルなサイド・ストーリーがある。2010年にこの〈TOTOギャラリー・間〉での「グローバル・エンズ」展で発表されたコンセプト、天と地の間にある存在として自由や夢を象徴する「雲男と雲女」が住む楽園「ヌヴォリーナ(雲の地)」の再建として、この「ラ・ヴィラ」を位置づけているというものだ。

「今ある世界や環境には満足できない部分がたくさんあります。『ラ・ヴィラ』はこの現実と、理想の世界の中間にあるものなのです」
展覧会のために来日した〈RCRアーキテクツ〉のラモン・ヴィラルタ(左)とカルマ・ピジェム。
こんなことを考えるようになったのも、RCRアーキテクツがずっと3人で活動してきたことと関係がある。

「私たちは『誰が作ったか』ということは重要だと思っていません。むしろ3人でともにプロジェクトに取り組むことで、複雑な問題を乗り越えてきました。『ラ・ヴィラ』を作っているのは『私』ではなく『私たち』であること、RCRの3人だけでなく多くの人たちの創造性を共有することで新しいものを作っているのだということ、彼らが世界を豊かにしていくのだということを発信していきたい。多くの人がいるから夢は育つものだし、夢はみんなで育てていくものなのです」

この展示やインスタレーションも観客と一緒に夢を見るためのものだ。夢には力がある。そんなことも感じさせる展覧会だ。

●会場には彼らの代表作品が6つ、模型とモニタで紹介されている。

〈トゥッソル・バジル陸上競技場〉(スペイン、オロット、1992〜2012年)。森を残し、木をぬうように走ることができる競技場だ。
photo_Hisao Suzuki
〈トゥッソル・バジル陸上競技場〉(スペイン、オロット、1992〜2012年)の模型。
〈スーラージュ美術館〉(フランス、ロデーズ、2014年)。フランスの現代アーティスト、ピエール・スーラージュの個人美術館。 photo_Hisao Suzuki
〈スーラージュ美術館〉(フランス、ロデーズ、2014年)の模型。丘の上からコールテン鋼の箱が飛び出すように見える建築。地形を活かしてつくられた。
〈ラ・リラ・シアター・パブリック・スペース〉(スペイン、リポイ、2011年)。川のそばに建つ古い劇場を取り壊してできた空地に覆いをつけ、この地下に劇場などの機能を持たせている。 photo_Hisao Suzuki
〈ラ・リラ・シアター・パブリック・スペース〉(スペイン、リポイ、2011年)の模型。
〈ベル=リョク・ワイナリー〉(スペイン、パラモス、2007年)の模型。
〈サン・アントーニ ジョアン・オリヴェール図書館〉(バルセロナ、2007年)の模型。空間的にも機能的にも開かれた中庭が鍵となる、図書館と高齢者のためのセンター。
〈オフェイドゥの火葬場〉(ベルギー、ホルスベーク、2014年)の模型。

RCRアーキテクツ展 夢のジオグラフィー

〈TOTOギャラリー・間〉東京都港区南青山1-24-3 TOTO乃木坂ビル3F。11時〜18時。月曜・祝日休。 TEL 03 3402 1010。入場無料。

『RCR Arquitectes Geography of Dreams RCRアーキテクツ 夢のジオグラフィー』(TOTO出版/4,600円)。展覧会に合わせて発行された作品集。後半の「ラ・ヴィラ」に関するページには特別に薄い紙が使われている。

副読本として「ラ・ヴィラ」の由来を物語形式で楽しめる書籍『ヌヴォリーナ』(自費出版/1,500円)も部数限定で〈Bookshop TOTO〉にて発売中。

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