素材から隈研吾の建築をひもとく個展がスタート! | ページ 2 | カーサ ブルータス Casa BRUTUS

素材から隈研吾の建築をひもとく個展がスタート!

世界各地で多くのプロジェクトを進行中の隈研吾。彼の建築の多彩な表情は木や石、紙や土などの素材を巧みに使いこなすことで生まれます。

ステンレスのメッシュに土を吹き付けた《虫塚》の部材。左官職人、挟土秀平氏とのコラボレーションによるもの。接着剤などで土は固まっているけれど苔も生える。
そのままだとぽろぽろと崩れてしまうけれど、何かと混ぜたり焼いたりすると固まってしっかりと自立する土は隠れた実力者だ。隈の建築ではグリーンと相性のいい土も活躍する。虫好きの脳学者、養老孟司がこれまで標本などのために犠牲にしてきた虫を供養する《虫塚》では土にガラス繊維と接着剤を混ぜ、ステンレスのメッシュに吹き付けた。風雨にさらされるうちに土は次第に変色し、苔むしてまるで大地がそのまま浮き上がったようになるだろう。緑化した屋根の模型は細かい穴のあいた多孔質セラミックに植物を植えたもの。繊維染色の過程で出来上がるスラグ(鉱物成分を含む物質)を転用している。
〈ポートランド日本庭園 カルチュラル・ヴィレッジ〉の屋根の模型。多孔質の軽量セラミックパネルにグリーンを植えた。軽くてメンテナンスも簡単だ。
石のコーナーに展示されている〈ヴィクトリア&アルバート・ミュージアム ダンディ〉は今年9月に開館予定。隈が「自らの代表作としたい」と意気込むプロジェクトだ。コンクリートの表面を粗く掻き落とし、セメントに混ぜた小石や砂利などを剥き出しにしている。

「スコットランドの海を望む崖のようなテクスチャーを出したいと思いました」(隈研吾)
〈ヴィクトリア&アルバート・ミュージアム ダンディ〉(2018年)。イギリス、スコットランド北部のダンディにオープンするミュージアム。ロンドンの装飾芸術を収蔵・展示する美術館の分館。 photo_Ross Fraser McLean
〈ヴィクトリア&アルバート・ミュージアム ダンディ〉模型。手前は石のようなテクスチャーのコンクリート。
韓国・済州島のプロジェクトでは、黒くて丸い火山岩で屋根を覆った。栃木県の〈石の美術館〉では既存の建物と同じ芦野石と、光を透過させる厚さ6ミリの大理石、レンガ用の窯で焼いて色を変えた芦野石を使ってファサードに表情をつけている。場所の“個性”はその土地の石によって決まる部分も大きい。隈の建築はその個性を尊重して作られる。隈はかつて『負ける建築』(岩波書店)という著書を発表した。建築は周囲を圧倒するものではなく、存在感が感じられないぐらいのものがちょうどいい、という考え方だ。いかにして周囲になじむ建築を作るか、彼の石の扱いにヒントがある。
〈中国美術学院民芸博物館〉のファサード。屋根をどっしりと覆うはずの瓦が空を飛んでいるような軽やかな光景。
会場には瓦が空を飛んでいるような模型が置かれている。〈中国美術学院民芸博物館〉のファサード部分だ。模型の瓦は日本製だが、隈は、本当は実物と同じく中国製の瓦を使いたかったのだという。色や寸法にむらがあるのが、かえって味が出ていいというのだ。瓦に限らず各国の技術には向き不向きがあるとも言う。彼によると日本なら木の技術は他国に引けを取らないし、アルミはフランス、石はイタリアの職人たちが秀でている。

「世界各地で仕事をする機会が増えたけれど、自分のスタイルを押しつけるのではなくその国の人たちから教わること、自分の知らなかったことを引き出して作るのが楽しい」(隈研吾)
「石」のコーナー。左はトラバーチンという石を使った〈ロータスハウス〉のファサード、右は〈ちょっ蔵広場〉の大谷石のスクリーン。
そんな各国の得意技術を使った作品の一つが、チェコのガラス職人とコラボレーションした照明器具だ。焼杉で作った型にガラスを流し込み、焼いた杉のでこぼこしたテクスチャーをそのままガラスに転写して作る。溶けたガラスも高温なので型は2回しかもたない。こんな話をする隈は実に楽しそうだ。職人へのリスペクトも伝わってくる。
焼杉を型にしたガラスのプロダクト《Yakisugi Collection》。チェコのガラスファクトリーとのコラボレーション。下にあるのが、焼杉の型。

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