2019年、パリに新しい美術館がオープンします。 | ページ 2 | カーサ ブルータス Casa BRUTUS

2019年、パリに新しい美術館がオープンします。

『カーサ ブルータス』2017年12月号より

ANDO建築のプロジェクトは海外でも着々と進行中。かつてスガン島での美術館計画が頓挫し苦汁をなめた「安藤&ピノー」がパリで再びアートの殿堂を建設します。

2006-09
in Venezia, Italia
【プンタ・デラ・ドガーナ】

運河通航の税関所として1682年に建てられた〈プンタ・デラ・ドガーナ〉を、ピノー・コレクションを展覧する現代美術館として再生。レンガ壁、木の梁など元の構造をあらわにし、白壁やガラスを新たに加えることで展示空間を実現。
時を経て2015年。久しぶりにパリを訪れた安藤はピノー氏を訪問した。ちょうど〈ブルス・ドゥ・コメルス〉を美術館にコンバートする計画を検討していたピノー氏はその場で安藤に打診。こうして2人は再びタッグを組むことになったのだ。南西にルーヴル美術館、東にポンピドゥーセンター、すぐ隣には昨年再開発されたばかりのレアール地区というパリ中心地にある〈ブルス・ドゥ・コメルス〉は18世紀に建造。穀物取引所として使われた円形ホールは1886年にガラスのドーム屋根がかけられ、商品取引所となり現在に至る。ドームの周縁壁には世界各地の貿易地がフレスコ画で描かれている。歴史的建造物に指定されたこの建物に手を加えることなく、美術館に転換するのが安藤に託された課題だった。そこで出した答えは「円の中の円」。既存の丸い建物の中に、円筒状のコンクリート壁を設けて作品を展示できるようにした。もともと丸い建物の外輪部にあった3フロアにわたるスペースも展示室となり、地下にはオーディトリウム、最上階にはレストランも設けられる。今年6月にパリで行われた記者会見で安藤は「円を描くように見学者がぐるっと歩き回る美術館というのは、世界でも珍しいのではないか」と述べ、ますます期待が高まる。

ルーヴル美術館はかつての王宮にガラスのピラミッドが建てられたことで論争が巻き起こった。ポンピドゥーセンターはその構造むき出しの建築に批判の声が上がった。伝統と前衛が常にぶつかりながら、いつの間にかその違和が淘汰されていくパリの建築スパイラルに、また一つ新たなプロジェクトが加わる。「こうと決めたらやり抜くピノー氏の意志の強さ」に魅かれるという安藤。「建築と都市、過去と現在、前衛性と慎み深さをうまく調和させる安藤の手腕」に厚い信頼を寄せるピノー氏。未完の計画から18年後となる2019年1月、2人の長い挑戦はいよいよパリで結実する。

2017-19
in Paris, France
【ブルス・ドゥ・コメルスコレクション・ピノー・パリ】

©Tadao Ando. Courtesy Collection Pinault – Paris.
©Artefactory Lab ; Tadao Ando Architect & Associates ; NeM / Niney & Marca Architectes ; Agence Pierre-Antoine Gatier. Courtesy Collection Pinault – Paris.
直径70mのドーム天井を持つ巨大な円形空間に、高さ9mの円筒状のコンクリート壁を設置。中央の大空間のほか、円周にある3フロアの展示室も合わせ展示面積は3,000㎡。フレスコ画を頭上に、内周と外周を行き来するようなユニークな設計。

左/フランソワ・ピノー 1936年生まれ。グッチなどを擁するケリング・グループ創業者。〈ブルス・ドゥ・コメルス〉計画では50年間の賃貸契約をパリ市と交わし、総工費約1億800万ユーロ全額をピノー一族が負担。
©Fred Marigaux 2016. Courtesy Collection Pinault – Paris.

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