マーガレット・ハウエル、〈ホテルオークラ東京〉解体計画に物申す! | ページ 2 | カーサ ブルータス Casa BRUTUS

マーガレット・ハウエル、〈ホテルオークラ東京〉解体計画に物申す!

25年ほど〈ホテルオークラ東京〉を常宿にしてきたマーガレットさん。本館建て替えを再考するよう、ロンドンのスタジオから訴えています。

photo_Iwan Baan
Q どこが一番お気に入りですか?

一言で言えばその雰囲気ですね。私はモダニズムの建築やデザインが好きなので、 日本の伝統をほどよく取り入れたモダンデザインを特に心地よく感じるのかもしれません。外観、内観、家具や照明や細かいディテールまで、実に入念にデザインされています。そしてそれが大切に維持され、多くの人に愛されてきたことで、独特の雰囲気が醸し出されています。それは同じものを建てたからって再現できるものではありません。時が生み出したものです。それを解体するって、本気なんでしょうか?


Q 本館はオフィスを併設した高層ビルになる予定のようです。

信じられません。今、世界中どこにいっても、ホテルは似たり寄ったりでしょ? 高層で眺めが良くても、窓が開けられないなら、映像を見ているのと変わりません。なんだか、カゴに閉じ込められているような気持ちになるところは少なくないでしょ? オークラのいいところはちゃんと窓が開けられて、外の空気、鳥の声が部屋の中に入ってくる。どんなに忙しくても、今、ここ、東京の真ん中にいることを感じさせてくれます。たとえば、 建て替える代わりに庭の部分にアネックスを建てることはできないのかしら? 庭があるに越したことはないですが、壊して高層を建てるぐらいなら、庭を削ったほうがいいですよ。


Q イギリスでは、歴史ある建物の保存が国を挙げて取り組まれていますが、モダニズム建築もそんな重要建築にリストアップされはじめていますね。

そうですね。 築百年以上の建物は珍しくない国ですが、モダニズム以降の建築にも保存指定が付き始めています。ロンドンには「オープンハウス」というイベントがあり、通常は入れない建物などが、毎年9月の2日間だけ一般公開になります。〈マーガレット・ハウエル〉でもモダニズム建築への認識を高めるためにこのイベントをサポートしてきたのですが、これによってモダニズム建築への認識が上がったことはあるかもしれません。ロンドンで始まった「オープンハウス」は現在世界各地の24都市にも広がっています。東京でもでもこうした企画があると、都民が建築の価値をもっと認識するようになるのではないかしら。


Q 最後にホテルオークラ解体への思いを語ってください。

私は長く使えるような服をデザインしてきましたが、建築は服よりももっと長く使い込んでいくべきもの。使い込むことによって醸し出されていく雰囲気は、一朝一夕には生まれません。このマッチ箱を単に古びたものと見る人もいるでしょうが、年を重ねたところにさらなる美しさを見いだす人もたくさんいるのです。新しくてピカピカのホテルはほかにもいくらでもあります。でも、この古色を帯びた宝石のようなホテルは、一度壊してしまったら、もう二度と同じものはできません。次世代に残すべき秀作です。表参道の同潤会アパートの取り壊しも残念でしたが、これは単なるホテルではなく誇るべき文化財ですよ。 この間、オノヨーコさんを見かけましたが、彼女のように長年オークラを愛してきた顧客はどんなにがっかりすることでしょうか。

オークラ本館の建て替えを、もう一度考え直してもらう余地はないものでしょうか? 同じ思いを持つであろう人たちを代表して、改めてそのことを訴えたいです。


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マーガレット・ハウエル

イギリス人ファッションデザイナー。1970年よりメンズ、ウィメンズ服を発表する。83年に東京青山店をオープンして以来、定期的に訪日し、〈ホテルオークラ東京〉を常宿とする。手工芸的要素を尊重し、家具や日用品などを含むライフスタイルを発信している。公式サイト