石田潤の In the mode|ボッテガ・ヴェネタの故郷、そして建築巡礼地への旅。 | ページ 2 | カーサ ブルータス Casa BRUTUS

石田潤の In the mode|ボッテガ・ヴェネタの故郷、そして建築巡礼地への旅。

トーマス・マイヤーがデザインしたボッテガ・ヴェネタのアトリエを訪れませんか?という誘いを受けて、9月末、イタリア北部にある都市ヴィチェンツァへと向かった。ヴィチェンツァはミラノから車で約2時間半、ヴェネチアにも近いヴェネト州の古都だ。この街はボッテガ・ヴェネタが誕生した地であるとともに建築に興味を抱くものならば一度は訪れてみたい“建築巡礼地”でもある。

ヴィツェンツァの大通り、コルソ・パッラーディオの脇に建つ〈パラッツォ・キエリカーティ〉。現在は美術館となっている。
数あるパッラーディオ建築のなかでもトーマスが魅了されたのは、“ラ・ロトンダ”こと〈ヴィラ・アルメリコ・カプラ〉だ。ヴィチェンツァの街並みを一望できる丘の上に立つ建物は、ローマ法皇の秘書を務めたパオロ・アルメリ司祭が退任後の住処としてパッラーディオに設計させた。
“ラ・ロトンダ”こと〈ヴィラ・アルメリコ・カプラ〉(竣工:1556年)。パッラーディオが手がけた最後のヴィラで、“ラ・ロトンダ”の呼び名は彼が設計の参考にしたローマのパンテオン内にある聖堂〈ロトンダ〉からつけられた。
現在のヴィラの所有者であるヴァルマラーナ氏はこれを「尊大な行為」と表現する。「この建物はたった一人の人物が住むために建てられました。これはとても異例なことです。敷地内の丘の下から見れば視界に入るのはこの建物のみで、さらに建物の中から見れば何ものにも遮られることなく四方の窓からヴィチェンツァの景色を独り占めすることができます」。
丘の上に建つ〈ヴィラ・アルメリコ・カプラ〉。ポーチ部分に立つと階段は視野に入らずダイレクトに景色が広がる。
完璧なシンメトリーを特徴とする正方形の建物は4つのファサードを持ち、各ファサードには古代ギリシャやローマの神殿に用いられた列柱が配されている。建物の4面は内部にある4つの部屋に日差しが入るよう東西南北から45度の角度を向いて建てられ、屋内の中心部の床には下から新鮮な空気が入るよう通風孔が設けられている。暗い冬は各部屋で自然光が楽しめ、暑さ厳しい夏は自然の冷房によって屋内全体が冷やされるという仕組みだ。内部は美しいフレスコ画や彫刻で飾られているが、完成当初は何もなく真っ白な状態だったという。