隈研吾展に見る:クマがネコとつくる建築と都市|青野尚子の今週末見るべきアート | ページ 4 | カーサ ブルータス Casa BRUTUS

隈研吾展に見る:クマがネコとつくる建築と都市|青野尚子の今週末見るべきアート

国内外で八面六臂の活躍を続ける隈研吾。〈高知県立美術館〉、〈長崎県美術館〉で好評だった個展『隈研吾展 新しい公共性をつくるためのネコの5原則』が東京に巡回してきました。ネコの手を借りた(!?)展示をご紹介します!

長岡市役所〈アオーレ長岡〉。「ナカドマ」と呼ばれる屋根付きの広場にはときに屋台なども並び、市民のコミュニケーションの場となっている。
〈アオーレ長岡〉の模型。この建物が街の中心部にできたおかげで、人の流れが戻ってきた。
映像作家、藤井光による〈アオーレ長岡〉映像。市民ボランティアも登場して人と建築との関わりをクローズアップする。
第2会場は「復興と建築をめぐるインタビュー」から始まる。南三陸や熊本市などの被災地で隈が設計した建築に関わる人々と、隈のインタビュービデオが上映されている。第1会場では設計者である隈の思いが表現されるが、こちらでは使い手はどう思っているのかが語られる。インタビュービデオの人選も内容もキュレーターが主導し、隈は誰に何を聞くのか、細かくは知らされていなかったそう。でも建築は作る人のものではなくて使う人のものなのだから、これは正しいように感じる。
ネコとともに隈が考えた都市計画「東京計画2020」。エアコン室外機や軒の模型にプロジェクションマッピングでネコが映し出されて、その振る舞いが再現される。
第2会場の「東京計画2020(ニャンニャン) ネコちゃん建築の5656(ゴロゴロ)原則」では東京・神楽坂エリアのカフェにいた半野良のネコに協力してもらい、都市をリサーチした。そのネコにGPSをつけさせてもらい、行動を記録した。そのリサーチの成果が「テンテン」などのキーワードと、ネコの振る舞いを可視化したTakram制作の映像で示される。

ネコに協力してもらおうと思ったのは視点が低いから、と隈は言う。

「建築家はどうしても神の目線、上から目線で都市を見てしまう。そのことへの反発から人間の視点で建築を見直してみようと思ったんです。でも人間でもまだ視点が高い。地面に近いネコの視点で都市を見たらもっとヒューマンな建築が作れるかもしれない。そう思ってネコの手を借りました」(隈)
ネコがお気に入りのスポットを回遊する様子。
映像の前の椅子は自由に座れる。椅子の側面はザラザラしていて、それぞれの椅子によって違う。ネコはザラザラしたところが大好きだ。自分の、または自分の家のネコ好みのザラザラ具合を探してみよう。
「東京計画2020」からはネコの“都市観”がわかった。人間は中にいると守られるような気がして安心できるハコが好きだが、ネコはその外に「テンテン」と広がるスポットを回遊している。「ザラザラ」したところや「シゲミ」の方が安心できるし、お気に入りスポットには「シルシ」をつけて他のネコと縄張り争いが起きないようにしている。よくSNSに箱や円の中に入るネコの動画が投稿されているように、彼らは「スキマ」が大好きだ。そしてGPSの軌跡からわかったネコの「ミチ」は地形に応じてふらふらと上下左右に揺れていた。
ネコにつけたGPSから再現した、ネコの「ミチ」の模型。
ネコは特に質感に対して敏感だ、と隈は言う。

「爪がひっかけられないようなつるつるしたところが嫌いで、ざらざらしたところを好む。僕は自分の建築でも紙や布、木といった柔らかい素材を使ってきました。それは、人間もそういった質感を取り戻したいと思うようになってきたからだと思うんですね。建築家は形を第一に考えがちだけれど、とくにコロナ禍で質感に目が向くようになったのでは」

第1会場で展示されている隈の作品にもネコの視点が活かされている。建築にあいた「孔」は内外をつなぎ、ネコの通り道にもなる。細かい「粒子」の集合体からはネコの好きなざらざらした質感が生まれる。ネコは簡単に爪をたてられる「やわらかい」ものも大好きだ。人間は何でも水平と垂直に整理したがるけれど、ネコはそんなことに頓着せず、「斜め」の面でもすいすいと上っていく。そしてネコは「時間」が経ってぼろぼろになった場所が大好きだし、あくせくせずのんびりと時間を過ごしている。
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