【和歌山・白浜町】南紀白浜に現れる、お城のような美術館。|甲斐みのりの建築半日散歩 | ページ 2 | カーサ ブルータス Casa BRUTUS

【和歌山・白浜町】南紀白浜に現れる、お城のような美術館。|甲斐みのりの建築半日散歩

関西屈指の温泉地・和歌山県南紀白浜の穏やかな海辺に建つ、ヨーロッパの古城のような〈ホテル川久〉。1991年に会員制高級リゾートホテルとして創業した宿が、2020年7月から私設美術館〈川久ミュージアム〉として一般公開。贅を極めた建築そのものと、これまでホテルの利用者以外未公開だった芸術作品としても価値ある3部屋、創業者の美術・骨董コレクションを堪能できる。

●和歌山の「知の巨人」の記録を残す博物館。

記念館の新館設計に携わる以前から南方熊楠を敬愛していた小嶋一浩は、熊楠の思想に基づき建築と自然が相即相入する空間を目指した。
田辺湾を見晴らす温泉に浸かり、和歌山の食材をふんだんに使った食事を味わうことができる〈ホテル川久〉。チェックイン前と、チェックイン後、それぞれ半日ずつ散歩に出た。

まずは、 同町内の温泉地・白浜を建築散歩。最初に足を運んだのは、1964年竣工の本館を野生司義章が、2017年竣工の新館をシーラカンスアンドアソシエイツの小嶋一浩と赤松佳珠子が設計した、番所山公園内の〈南方熊楠記念館〉。
自然の光が差し込むピロティやエントランスは、周囲の森の緑が建築と融け合うようにと「侵」がテーマ。アーチを取り入れ柱の形を統一せずあえて変化をつけている。
エントランスの明かりとりを飾るのは、りぼん作家・安東陽子によるランタン作品。熊楠のスケッチを印刷した生地を使い、蔦のようなイメージで、植物の生命力を表現している。
あえて「閉」を感じる空間にすることで、熊楠自身の人物像に集中できる、新館2階の常設展示室。熊楠の生涯や業績などを展示する。
1867年に和歌山市に生まれた南方熊楠は、粘菌の研究、博物学、民俗学、植物学、宗教学、生態学など多くの分野で業績を残し、今なお熱狂的に支持される知の巨人。桁外れの記憶力、操った言語は18ヶ国ほど、田辺湾・神島で昭和天皇への御進講、孫文や柳田国男との交流、「南方マンダラ」と呼ばれる曼荼羅、エコロジーの先駆者と、エピソードは尽きない。ここで保存・公開される熊楠の資料・文献・遺品などを通して、果てしない熊楠の人物像に近づくことができる。
新館から本館に続く渡り廊下の壁は、全長約7.8メートルの巻紙に細かな字でびっしりと熊楠自身の字で綴られた、履歴書の展示スペースとして設計された。
1960年代のモダニズム建築を象徴する、野生司義章設計による本館の螺旋階段。本館は2019年に、戦後建築家が関わった建造物としては和歌山県内で初めて、国の登録有形文化財に指定された。
360度、風光明媚な田辺湾を見晴らす屋上展望デッキでは、建築物に身を置きながら空や海や周囲の木々と融け合える。新館から本館に続く細長い通路は、熊楠が研究した粘菌をイメージしている。

〈南方熊楠記念館〉

和歌山県西牟婁郡白浜町3601-1 TEL 0739 42 2872。9時〜16時30分最終入館。木曜、6月28日〜30日、年末年始休(7月20日〜8月31日は無休)。入館料600円。

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