【和歌山県・白浜町】南紀白浜に現れる、お城のような美術館。|甲斐みのりの建築半日散歩 | カーサ ブルータス Casa BRUTUS

【和歌山県・白浜町】南紀白浜に現れる、お城のような美術館。|甲斐みのりの建築半日散歩

関西屈指の温泉地・和歌山県南紀白浜の穏やかな海辺に建つ、ヨーロッパの古城のような〈ホテル川久〉。1991年に会員制高級リゾートホテルとして創業した宿が、2020年7月から私設美術館〈川久ミュージアム〉として一般公開。贅を極めた建築そのものと、これまでホテルの利用者以外未公開だった芸術作品としても価値ある3部屋、創業者の美術・骨董コレクションを堪能できる。

●南紀白浜の海辺に建つ古城のようなホテルが、建物まるごとミュージアムに。

白浜の海辺に建つ〈ホテル川久〉。1993年に「村野藤吾賞」を受賞している。
年に数回仕事で和歌山県・南紀白浜空港を利用しているが、日本一多くのパンダが暮らす町としても知られる温泉地・白浜を初めて車で通ったとき、白砂の浜辺の景色とともに強く目に焼き付いたのが、海辺に突如現れるお城のような豪奢な建物〈ホテル川久〉。その際、カフェの利用がてら玄関やロビー周りを見学したけれど、目に映るなにもかもが壮大で、海外の美術館を訪れたときのように圧倒され、後日夢に出てくるほどだった。
ホテルを象徴する瓦は、中国の紫禁城と同じ瑠璃瓦を47万枚使用している。蒼い海と空に映える独特な色は、皇帝だけが使うことのできた「老中黄」。
ホテルの正面に立つと目に飛び込むのが、空に浮かぶように客人を出迎える、うさぎのブロンズ像。イギリス人彫刻家、バリー・フラナガンの作品。
そんな〈ホテル川久〉が、創業から30年経った今、〈川久ミュージアム〉として一般公開されることを知り、ホテルの宿泊を兼ねて再訪した。常識にとらわれない川久ならではなのが、「建物そのものが美術的価値がある」という考えのもと、創業者が世界中から蒐集した絵画・骨董・インテリアを、創業当時と変わらぬ贅沢な空間に開放的に並べていること。これまでは一部のホテル利用者だけが知る、空間そのものが芸術作品と言える3室を含め、1階から2階までを自由に見学できる。
ホテルの顔となるロビー。ローマンモザイクタイルが敷き詰められた床から、22.5金の金箔天井までの高さは10メートル。左官職人・久住章が率いる職人集団「花咲か団」が手がけた1本1億円する擬似大理石の蒼い柱が24本並ぶ。金箔天井はフランスの人間国宝に認定された金箔職人、ロベール・ゴアールが手がけた。太陽の光を受けて輝くように計算されている。
イタリアのモザイク職人集団が、1枚ずつ手作業で約1センチ角のローマンモザイクタイルを埋め込んだロビーの床。モノトーンの色合いは、客人の洋服の色を際立たせるため。
ドイツ人の照明デザイナー、インゴ・マウラーが手がけた部屋「ドロミティ」。ヘンリー・ムーアの「母と子」が展示されている。これまではミーティングや会食で使用する人のみが見られる空間で、〈川久ミュージアム〉のオープンに合わせて一般公開が始まった。
日本画家・中尾淳が描く舞妓画が飾られた広い和室「斗酒千吟」には、〈ホテル川久〉の前身〈旅館川久〉時代の和風のシャンデリアが天井を飾る。
創業者が世界中から蒐集した絵画が飾られる2階通路の壁を埋め尽くすのは、陶芸家・加藤元男による陶板。
中国・紫禁城と同じで、皇帝だけが使用を許された「老中黄」色の瑠璃瓦。イギリス・イブストック社の煉瓦を140万ピース使った外壁。塗り継ができないように50人の職人が1日で仕上げた土佐漆喰の大庇。塔上に鎮座する巨大なうさぎのブロンズ像。内部に入る前にもすでに見所あまた。そこから、ドーム型の金箔天井の下に、ローマンモザイクタイルを敷き詰め、疑似大理石の柱が並ぶロビーに立ち、高揚が加速する。
会食や結婚式会場に使われていたホール「サラ・チェリベルティ」。〈川久ミュージアム〉のオープンに合わせて一般公開が始まった見所の一つ。イタリア人画家、ジュオルジオ・チェリベルティによって、ドーム型の天井に「愛と自由と平和」がテーマの天井画が描かれている。床は寄木で、マイクなしでも音が響く設計に。
ワイヤーで天井から吊り下げた螺旋階段、寄木細工の床のエレベーター、モスクのような透かし天井、壁に埋め込まれたビザンチンモザイク。骨董や絵画の貴重なオーナーズコレクションと建築が寄り添い合い、夢の城に輝きをもたらす。「サラ・チェリベルティ」「ドロミティ」「斗酒千吟」と名付けられた、空間全てが芸術作品といえる3室では、時間を忘れて“ここにいる”ことを楽しんだ。

一般来場者はチケット制の〈川久ミュージアム〉だが、〈ホテル川久〉宿泊客は無料で見学できる。私も田辺湾を見晴らす温泉に浸かり、和歌山の食材をふんだんに使った食事を味わうことができるホテルに滞在中、部屋、食事会場、温泉浴場を行き来しながら、何度も美術館スペースを周回して楽しんだ。その間ずっと特別な気持ちでいられたのも、ホテルそのものが優麗な美術館だからだ。
オープンテラスデッキに、天然温泉露天風呂がついた「プレジデンシャル スパ・スイートルーム」。
〈ホテル川久〉の夕・朝の食事は、和歌山や北海道の旬の贅沢な食材を堪能できる「王様のビュッフェ」が高評価。その場で調理する実演料理に心が踊る。
〈川久ミュージアム〉オープンを記念した、1階カフェ「Musee」のスペシャルメニュー。100年前のブランデーをバニラアイスのにかける「百年の口どけ」。3,800円。
〈川久ミュージアム〉を代表する芸術作品の一つ、金箔ドーム天井がモチーフのカフェメニュー。金箔コーヒー「カフェ・ゴアール」。2,900円。

〈川久ミュージアム/ホテル川久〉

和歌山県西牟婁郡白浜町3745 TEL 0739 42 2662。10時30分〜17時30分最終入館。無休。入館料1,000円(宿泊客は無料)。

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