レム・コールハースの展覧会は“この時”を予見していた!?|吉田実香のNY通信 | ページ 2 | カーサ ブルータス Casa BRUTUS

レム・コールハースの展覧会は“この時”を予見していた!?|吉田実香のNY通信

建築家、レム・コールハースが2月、グッゲンハイムを舞台に生み出した展覧会のテーマは “カントリーサイド”。都市を考察し続けてきた彼が選んだこのテーマは世界からの来館者に衝撃をもたらし、NYの大きな話題となった。だが開幕からわずか3週間で休館。振り返れば、今の私たちに深く突き刺さるレムからのメッセージが、会場内にあふれている。

●建築の未来の、ひとつの形。

さて、最上階の6階ではどんなフィナーレが待っているのだろう? ……と気になるところだが、レムは結論を明示しない。全館を通じ、命題とそれにまつわる仔細なデータの集積を鮮やかな手法で示し、あとは観る者に委ねるのである。

6階に並ぶ展示のひとつに、レムが「未来の建築」と呼ぶ建物がある。その名も〈タホ・レノ・インダストリアルセンター〉。写真ではシンプルな箱の連続に見える通称TRICは、ネバダ州の原野に建設された巨大データ施設だ。43万ヘクタールというから、東京都の約2倍の面積にあたる広大な敷地に突如現れる建物では、テスラを始めとするメガ企業のデータを管理する。無人の施設のため装飾的なデザインや照明はもちろん、人間の存在を感じさせるものが何ひとつ見当たらない。コードやアルゴリズム、テクノロジーだけで作られたこの〈タホ・レノ・インダストリアルセンター〉こそ、これから標準となるであろう建築である、とレムは説く。「人類が何千年にもわたり、連綿と紡いできた文化の蓄積を ”放棄” した建物だ。ここにはイデオロギーすら存在しない」。膨大な電子データを蓄積する巨大な「箱」、そこには人の姿はない。野生の馬があたりを駆け抜けるだけである。
温度や光、湿度が高度に管理され、無菌状態で育成できる温室はオーガニック栽培に理想的。『ナショナル・ジオグラフィック』誌は、ここオランダのウェストラントを「温室栽培の首都」と呼んだ。
異種の作物を共に育てるオランダの最先端農業メソッド〈ピクセル・ファーミング〉。工業化された農業へのアンチテーゼだ。
この『カントリーサイド』展、残念ながら2020年4月現在では観ることはできない。NYの他の美術館やギャラリー同様、〈グッゲンハイム美術館〉も新型コロナウィルスの影響で3月13日から臨時休館中なのである。2月20日のオープニングから8月までの半年間、グッゲンがレム/OMA一色に染まる歴史的な展覧会……のはずが、公開されたのはわずか3週間。〈グッゲンハイム美術館〉の建築とコラボしたサイトスペシフィックな展覧会だけに、いずれ再公開の日が来るとすれば、やはりこの場所で観てみたいが現時点では一切が未定である。

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