吉田実香のNY通信|ダイナミックに生まれ変わった〈ペース・ギャラリー〉。 | ページ 2 | カーサ ブルータス Casa BRUTUS

吉田実香のNY通信|ダイナミックに生まれ変わった〈ペース・ギャラリー〉。

美術館レベルのスケールへと続々生まれ変わる、NYの「メガ・ギャラリー」。その先陣を切って新装オープンしたのが〈ペース・ギャラリー〉だ。果たしてその中身は?

上/ドミニク・コゼルスキー。下/エンリコ・ボネッティ。
〈ペース・ギャラリー〉は全8階のうち実に5階を展示スペースに充て、2階と6階には屋外の彫刻ガーデンまでも設けてある。リサーチに利用できる予約制のライブラリーもあれば、所蔵品を保管庫から出して見せてもらえる「オープン・ストアレージ」もスタートした。建物といいサービスといい、スケール・質ともにまさに美術館レベル。だがコゼルスキーはこう語る。「美術館と違い、〈ペース・ギャラリー〉では建物全体を通じてアート作品がゆるやかにつながり合います。来館者は空間を回遊しながら、またギャラリーのスタッフはここで働きながら、アートと出会い続けるのです」
6階のテラス。表面のウッドブロックの下には深さ約60センチまで砂が敷き詰めてある。これにより床の損傷を防ぐ支えを設置しなくても、重量のある彫刻がそのままの姿で展示できる。
ユニークな木目が特徴的なウッドブロックを床に。
ドアノブなど細部にも素材へのこだわりが見て取れる。「この建物では火山石や発泡アルミニウム、ステンレス鋼など様々な素材を使っています。いずれも、私たちが目指した建物の姿を形づくるために選んだものであって、これらの素材ありきという訳ではありません。ただウッドなど、温もりや人間らしさを感じさせる素材を加えるというのは念頭にありました」

展示を見て行こう。1階エントランスから誘われるように足が向くのが、今回のこけら落としアレクサンダー・カルダー展『Calder / Small Sphere and Heavy Sphere』だ。空間デザインを手がけたのはステファニー・ゴトウ。カルダー財団の本部を設計し、LAの〈ハウザー&ワース・ギャラリー〉で催されたカルダー展のデザインも手がけている建築家だ。
『Calder / Small Sphere and Heavy Sphere』展示風景。手前は《Small Sphere and Heavy Sphere》(1932/1933)、右奥《Eucalyptus》(1940)。
『Calder / Small Sphere and Heavy Sphere』展より。ブロンクス動物園やセントラルパーク動物園で描いた、動物のスケッチ。1926年発表。勢いあふれる筆さばきは、やがて針金彫刻、そしてモビールへと進化する。
この『Calder / Small Sphere and Heavy Sphere』展では、カルダーがまだ駆け出しの頃に描いた絵画や、針金を用いた立体作品をはじめ、1920年代から1960年代までの作品およそ70点が時系列で紹介される。動物のスケッチが壁いっぱいに現れたり、抽象画が並んでいたり、初期の針金作品が天井からこちらを見おろしていたり。部屋から部屋へとスムーズに連なる展示スペースを進みながら、カルダーがモビール彫刻の発明へと至り、モビールを極めた道のりを確かめていく。

床や壁にモビールの影を一切落とさないよう照明を工夫したスペースでは、モビール自体のフォルムやエッジの美しさが際立つ。かと思えば、別のコーナーでは真っ赤なモビールが強い光を受け、白い背景にくっきりと影を落としている。誰かがその小さなコーナーを通ると空気が揺れ、赤いモビールと影とがゆるやかに舞い始めるのだ。

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