石上純也の“自由な建築”が上海に上陸!
昨年、パリで開かれ、大きな話題となった石上純也の個展『Freeing Architecture』が上海に巡回してきました。新たな作品も加えてスケールアップした展覧会の様子をレポートします!
同じく中国で工事が始まった〈谷の教会〉は30メートルほどの高さの丘に挟まれた谷が敷地だ。
「谷のスケール感を超えたものにしたいと思いました。建物の入り口は幅1.3メートル、高さ45メートルと谷より狭くて高いものになります。訪れる人は谷の延長のような内部空間を進むことになります」
この教会には屋根はなく、太陽光も雨もそのまま中に入ってくる。入り口は狭いけれど、奥の礼拝堂に進むにつれて幅が広くなっていくので、入り口から奥を見ると光に導かれるような感じになる。壁がわずかに傾いているので、雨は壁を伝って落ちていく。谷の合間に、谷とは違う空間体験ができる場が広がっている。
「谷のスケール感を超えたものにしたいと思いました。建物の入り口は幅1.3メートル、高さ45メートルと谷より狭くて高いものになります。訪れる人は谷の延長のような内部空間を進むことになります」
この教会には屋根はなく、太陽光も雨もそのまま中に入ってくる。入り口は狭いけれど、奥の礼拝堂に進むにつれて幅が広くなっていくので、入り口から奥を見ると光に導かれるような感じになる。壁がわずかに傾いているので、雨は壁を伝って落ちていく。谷の合間に、谷とは違う空間体験ができる場が広がっている。
栃木県に昨年、完成したボタニカルガーデンアートビオトープ〈水庭〉は敷地に大小さまざまな160の人工池をつくり、その池の間に隣接するホテルの敷地にあった400本の木を移植するというもの。この「庭」は元は牧草地だが50年ほど前は水田であり、さらにその前は森だった。
「景色の歴史が積層したような庭です。普通、庭を造るときは木も石も外の環境から持ってくることが多いのですが、ここでは基本的に、ここにある環境を組み替えてつくりました」
「景色の歴史が積層したような庭です。普通、庭を造るときは木も石も外の環境から持ってくることが多いのですが、ここでは基本的に、ここにある環境を組み替えてつくりました」
どの木をどこに移植するかは、木の高さや枝の広がりを実測して決めた。会場にはその “設計図” も展示されている。池は近くの川から水を引いて作った。地下に導水管があり、池から池に水が流れるようになっている。池と木が混ざり合う〈水庭〉は周辺の環境とも連続しつつ、自然のままではあり得ない景観を作り出す。
東京郊外の小住宅〈House with Plants (h project)〉では「内部環境のあり方を考えた」という。屋根が少し傾いた立方体をした家の中には、土がむき出しになった半屋外的なエリアがある。この土のエリアのうち一部は叩いて固め、残りは柔らかい土のままにしておく。叩いて固めた場所はダイニングやキッチンなど生活のためのエリアになり、柔らかいところには植物を植える。土を叩いて固める「三和土」(たたき)は日本に昔からある技術だ。
「古くからある建築の技術は、もともとのランドスケープを建築に置き換えていると考えることができます。この家の中はランドスケープの延長であり、かつ内部空間でもある、曖昧な空間なんです」
「古くからある建築の技術は、もともとのランドスケープを建築に置き換えていると考えることができます。この家の中はランドスケープの延長であり、かつ内部空間でもある、曖昧な空間なんです」
コペンハーゲンに計画している、平和について考えるための施設〈House of Peace〉は海の上が敷地だ。クライアントはこの場所を埋め立て、その上に建物を建てるつもりだった。でも、そうすると元の環境を変えることになるし、コストもかかる。そこで石上は海中に杭をうち、その上に雲のような屋根をかけることにした。利用者はボートで屋根の下に入り、水面を漂いながら空間を体験できる。