山下めぐみのロンドン通信|石上純也が語る、サーペンタイン・パビリオン。 | カーサ ブルータス Casa BRUTUS

山下めぐみのロンドン通信|石上純也が語る、サーペンタイン・パビリオン。

毎年、注目の建築家が手がけるロンドンの夏の風物詩、〈サーペンタインギャラリー〉建築パビリオン。今年設計を担当した建築家・石上純也に話を聞きました。

ザハ・ハディド、フランク・ゲーリー、ピーター・ズントーなど、これまで世界的な建築家が選ばれてきた栄誉あるサーペンタインギャラリーの建築パビリオン。
ハイドパークとつながった公園、ケンジントンガーデンズ内にある現代アートの展示で有名なロンドンの〈サーペンタインギャラリー〉。毎年、建築パビリオンが登場することも楽しみの一つだ。日本人建築家としては、石上が4人目になる。

── そろそろ石上さんの番では?と思ってました。おめでとうございます。今回の作品の出発点は?

サーペンタインギャラリーは大きな公園の中にあるので、建築をランドスケープの一部として捉えたい、というところから考え始めました。
うれしそうに語る石上純也は、1974年生まれの45歳。2009年日本建築学会賞、2010年ヴェネツィア・ビエンナーレ金獅子賞など受賞多数。
── 一番表現したかったことは?

ランドスケープとして建築を考えた時に、それはどういうことか?と突き詰めたところ、古い建築に行き着きました。古い建築技術には世界のどこでも似かよったところがあります。たとえば、石で葺いた屋根というのは、日本や中国などアジアの国にもあれば、ヨーロッパにもあります。こうした共通点があることがところが面白いなと思ったんです。さらにどうしてか? と考えてみると、古い建築技術というのは、そこにあるランドスケープのあり方や素材を単純な方法で建築に置き換えている。だから、場所は違えど共通したものがあるのではないかと。今回、ランドスケープとしての建築を表現するなら、古い技術を使って表現したいと考えました。
スレート材を注意深く「ランダム」に積み上げた屋根。
── 今回、イギリスでも古くから使われているスレートが屋根の素材に使われています。

そうですね。それを通常はきっちり並べるわけですが、自然なランダム性を取り入れたかった。とは言っても実際には自然にランダムになるわけではないので、こういう風に並べてほしいというサンプルを用意して、それに倣って「ちゃんとランダムに」並べてもらったわけです。そこが一番むずかしいところでした。
石の丘のようなパビリオンの後ろには、同じくスレート材の屋根の本館が。
── 石の重さが61トンもあるとのことですが、それに支えるのが細い柱、という対比も不思議な感じです。

この作品に限らず、建築を作るときに構造システムができるだけ見えないようなものにしたいという思いがあります。どうやってできているか、ある程度わからないようにしたいんです。今回、ランドスケープのようなものを目指したわけですが、壮大な自然のシステムには、人が認識することも解き明かすことのできない面があります。そこに自然への畏怖であるとか、ミステリアスな魅力を感じたりします。そういうものを建築の雰囲気に取り込みたいので、構造もある程度、ミステリアスにしたかった。これだけ重い屋根をどうやってこの細い柱で支えているのか、すぐには解らないかと思います。梁もなぜこんなに細いもので成り立っているのか、と。構造を消すようにして考えていくのに興味があります。