かつて水の神殿のごとく睥睨したであろう配水塔のオーラは今も。

あと2年で竣工80年を数える名古屋市街地の元・配水塔。現在は市民の演劇練習場として立派に機能している。先ごろ「土木遺産」に認定されたばかり。その重厚さがポルシェにふさわしいと思いつつ。

建物の裏側にて。つい先ごろまでこの塔の隣にプールがあったことを資料写真で知ったが、とてもよく似合っていた。

先ごろ土木遺産に認定された1937(昭和12)年竣工の建造物。高さ約30m、直径約33mというスケールは近くから見ると迫力満点、昔の鉄筋コンクリート造ゆえ、いかにも重厚かつ頑丈そうだ。てっぺんに4000㎥弱つまり4000トンもの水を蓄え、その水が名古屋駅から西側の住宅地に送られていた。ポンプによる圧送ではなく、塔から落ちる水圧で各家庭の台所や風呂場の蛇口に届いていたのだ。その時代にもしここで暮らしていたら、いつもこの塔の存在を誇らしく思い、感謝の気持ちも抱いていただろう。周囲を取り巻く16本の円柱の様子から「パルテノン神殿風」と呼ばれたが、まさに「水の神殿」然としている。

配水塔の役割を終えた後も26年間にわたり図書館として使われ、さらなる改修により演劇練習用施設となって現在に至っている。そんな歴史もこの強いオーラに資しているに違いない。メンテナンスの行き届いた真っ白な壁面は青空にまぶしいほどで、遺産どころか十分に現役なのであった。

名古屋への往復はポルシェ・ボクスター。群馬県の富弘美術館を訪ねて以来、個人的にも10年ぶりのドライブとなった。少し走っただけでも、恐るべき完成度の高さに、身体の芯のあたりが熱を帯びてくる。一見、19年前の初代モデルから大した変わりもないように映るが、実は2度のフルモデルチェンジを経て、さらには細かい改変を継続的に受けてきているのだった。

その詳細を見ると、自動車会社が一般市販車に対してする改修とは全然レベルが違う。それだけ自分たちの製品にコダワリがあるのがポルシェ・ブランド、と言われればそうだろう。しかし、それはほとんどレースのメカニックのやり方に近い。

コンマ1秒でも速く、というだけでなく、ドライバーの細かい助言やダメ出し、非常に私的な好悪も含め、あらゆる要求に応えるために徹夜で作業する、というのが彼らの日常だ。このクルマの場合はすでに速さは十分だから、世界中のクルマ好きの感性や官能を満たそうと、すべてのリソースを注ぎ込んできたように思える。クルマへの強靱な愛、と言うしかない。

内装の革の質感も造作も非の打ちどころなし。息が詰まるほどの仕上げ。

フロントよりもリアのデザインが少しずつ凝った曲線美へと変化してきた。

究極のモダニズムというべきホールには往時の配管も記念に残されている。

現在は稲葉地公園内にあるが、公園入口にはこんな列柱、さらに塔に至るまで20mほどの遊水路もあり、昔の水道施設は何と演劇的につくられたものよ、と思う。

巡礼地:名古屋市演劇練習館・アクテノン

設計/成瀬薫。配水塔として1937年~44年稼働、65年~91年リノベにより中村図書館となり、89年名古屋市都市景観重要建築物に指定、95年演劇練習場として3度目の現役復帰を果たし現在も多くの利用者に支持されている。2014年旧稲葉地配水塔として土木学会推奨土木遺産に認定。 

愛知県名古屋市中村区稲葉地町1-47
TEL 052 413 6631。公式サイト

巡礼車:ポルシェ・ボクスター

1996年にデビュー、2004年に2代目、12年現行の3代目モデルとなる。エンジンは2.7リッター水平対向6気筒で265馬力。ストイックなまでのキープ・コンセプトも魅力。このページには似つかわしくない台詞とは思うが、どうしても言っておきたい真のお買い得だ。7速PDK 6,710,000円(ポルシェコール TEL 0120 846 911)。公式サイト