体感してこそわかる名作の味わい深さ。

メルセデスSクラスの背後に威風堂々と屹立するのは、黒川紀章が初期に手がけたモダニズム建築の傑作。クルマと建築、マスターピースの豪華セッションを楽しむ。

2階手前側は後から増築された部分。これがなかったら外観のインパクトはより強烈だっただろう。屋上に見える四角い箱状のものが建物を支えるコアで、館内では螺旋階段室やエレベーター室となる。

来年は竣工50年を迎えるとともに、設計を手がけた黒川紀章の没後10年にもあたる。竣工当時、周りはほとんど田畑だったというから、それはそれは目立ったことだろう。今でも寒河江の街には高い建物が少なく、写真のようにスコンと抜けた雄大な空をバックに建築と向き合える。往時の市民たちの気持ちがそれなりに想像できるのだ。

4階から見下ろした吹き抜けフロア。

館内はもっとビビッドにこの半世紀間の時の流れや密度を感じさせる景色にあふれていた。吹き抜けによる開放感に驚かされるメインフロア。中空には岡本太郎による照明のモニュメント《生誕》、床は一面幾何学模様を組み合わせたモザイクタイル、さらに隣の市に拠点を置く〈天童木工〉製の素朴ながらモダンな特注の調度類。若き建築家が自信満々に提案したであろう新機軸たちが、半世紀後の空気にまろやかに溶け合いながら、真っすぐに主張してくる。何より市庁舎としては異例の華やぎがこの空間の大きな魅力であることを実感できたことこそ、現地まで行ったかいあり、なのだった。

2階に市民が来庁するフロア、1階には市議会議場がある。「市民の生活を議会が支える」という思想を形態に落とし込んだ黒川青年の発想が良い。