Interview with Tomas Maier日本で再発見した
モダニズム建築の魅力。

日本で2度目のモダニズム建築をめぐる視察を終えたトーマス・マイヤー。興奮さめやらぬ彼に、閉館となった神奈川県立近代美術館のテラスで、その思いを聞いた。
photo_Tetsuya Ito editor_Jun Ishida
鶴岡八幡宮の平家池に面して建つ〈旧 神奈川県立近代美術館 鎌倉〉。展示室を支える鉄骨の細く繊細な姿が印象的だ。閉館後も、変わらずこの美しさが保たれることを願いたい。
- ル・コルビュジエ設計の〈国立西洋美術館〉をはじめ、その弟子の建築を見て回った印象を教えてください。
「日本には戦後つくられた美しい建築がたくさんあり、特に1950年代初頭〜60年代初頭にかけての建築は興味深いですね。その時代に活躍した建築家の個々の特色にもひかれます。いろいろと思いは巡りますが、今回視察した建築はみな傑作でした」
- 前川國男、坂倉準三共に、ル・コルビュジエに師事しています。これら日本の建築家はコルビュジエの思想をどう享受したと思いますか?
「興味深いですね。例えば神奈川県立近代美術館 鎌倉は、国立西洋美術館より前に建てられています。ですので直接的には国立西洋美術館の影響は受けていません。もちろん坂倉はル・コルビュジエの弟子ですが、この美術館からは坂倉独自の思想が感じ取れます。神奈川県立音楽堂や東京文化会館にも前川國男という建築家の個性を感じました。そういった意味では、ル・コルビュジエの国立西洋美術館こそが、これらの影響を受けたとも考えられます」
- 〈国立西洋美術館〉が世界遺産に登録されようとしています。今回、初めて国立西洋美術館を訪れて、どのように感じられましたか?
「世界遺産に登録されることは、とても喜ばしいです。国立西洋美術館は美しい建築物です。建築技術も素晴らしい。どのように建てられたのかを知ると、ますます圧倒されます。紛れもなく傑作です。ぜひともこの建物は次の世代に受け継ぎ、残すべきです」
- モダニズム建築を保護するために、私たちにできることは何でしょう?
「意識を高めることが必要だと思います。このことは解体されてしまった〈ホテルオークラ東京〉保存への取り組みの際にもカーサと話し合いましたが、いつの時代でも新しい建築物が完成すると人々は好き嫌いを論じ、そしてある期間、人々はそれを慈しみます」
- なるほど……。
「しかし時の経過とともに、人々は興味を失っていきます。関心が薄れている時こそ、守る行動が必要です。なぜなら人々が再びその建物の良さを認識するのは、何年も先のことですから。今日訪問した建物も、私たち建築を愛する者にとってはそれらの価値は明らかです。しかし一般的にはそうではありません。恐らく15年〜20年経った頃に、人々は再びこの建物を愛し始めるでしょう。こんなに美しいのですから当然です。言わば〝時代の証〟なのです」
- まさに、その通りですね。
「私たちが今やるべきことは、社会の意識を高めること。これらの建物が不遇の時を乗り越え、保護されるように行動することです。人々が否定的な見方をする時代において、私たちこそ価値を訴える役割を担っているのです。人々の意識を向上させなければなりません。建物の素晴らしさを、声を大にして発信し、皆に気づかせなくてはなりません。なぜこれらを後世に残すべきなのか、訴えるのです。そして同じようなことが、建築以外の分野においても危惧されています。不遇の時代というのは連鎖します。まずは建築を愛する私たちのような人間が建物を守るためにできることから始めるべきです」
- カーサ読者へのメッセージは?
「日本の建物を守るために、日本人の意識を高めなければなりません。これらの建築は、日本の文化の一部であり時代の証です。日本のモダニズム建築は、世界的な視点からも非常に重要なものですし、建築家の名も国際的に注目を浴びています。ヨーロッパやアメリカなど世界中の人々が日本のモダニズム建築の存続を願っているのです」