これだけ知っておけば怖くない!?

カーサ的なぜなにモダニズム建築。

カーサ厳選のリストを見る前に、少しだけお勉強タイム。モダニズム建築をはじめ、重要文化財やドコモモなど、知っておくべきキーワードをさらりと解説します。

Q.1そもそもモダニズム建築って一体どんなものですか?

一般的にモダニズム建築(近代建築)とは、産業革命以降(19世紀以降)に誕生した建築を言い、鉄・ガラス・コンクリートに代表される工業化された素材・材料でつくられていることが大きな特徴です。また、ギリシャ、ローマ、ゴシック、バロックなど、過去の歴史的な様式に倣ったものでない、新しい時代の建築であるということも前提となります。代表的なものでは、ドイツに建てられたデザイン学校〈バウハウス・デッサウ校舎〉(1926年竣工。設計:ヴァルター・グロピウス)でしょう。ただ日本のモダニズム建築のなかには〈八勝館御幸の間〉のように木造のものもあります。近代合理主義的精神に立脚してつくられたという点でこれもモダニズム建築なのです。

Q.2重要文化財指定されたモダニズム建築があるって本当?

戦後に建てられたモダニズム建築としては、右の写真にある4件が重要文化財に指定されています。重要文化財とは、有形文化財の中でも重要と認められるものを文部科学大臣が指定。指定されると、税制面での優遇措置のほか、修復にかかる費用などの一部を補助してもらえます。文化財保護法では、1.意匠的に優秀なもの、2.技術的に優秀なもの、3.歴史的価値の高いもの、4.学術的価値の高いもの、5.流派的または地方的特色において顕著なもの、のいずれかに該当することを指定の条件としています。2014年11月現在、重要文化財指定されている建造物は2,419件4,676棟。この中から220件268棟が「製作が極めて優れ、かつ、文化史的意義の特に深いもの」として国宝に指定されています。一方、これら国が指定するシステムに対し、より多くの文化財を保存・活用していくことを目的に設けられたのが、登録有形文化財です。こちらは登録制で、原則として建設後50年を経過したもののうち、1.国土の歴史的景観に寄与しているもの、2.造形の規範になっているもの、3.再現することが容易でないもののいずれかを満たすことが条件。戦後モダニズム建築からも〈名古屋大学豊田講堂〉(1960年竣工。設計:槇文彦)など、数多くの作品が登録されています。

  1. 国立西洋美術館本館(1959年竣工。設計:ル・コルビュジエ) photo: Hiroyuki Hirai
  2. 世界平和記念聖堂(1954年竣工。設計:村野藤吾) photo: Kazuya Morishima
  3. 日土小学校(1956年、58年竣工。設計:松村正恒) 提供/八幡浜市教育委員会、写真/北村徹
  4. 広島平和記念資料館(1955年竣工。設計:丹下健三) photo: Kazuya Morishima

Q.3今特集での55件のセレクト基準とは?

モダニズム建築の記録・保存を行う国際的な学術組織である〈ドコモモ〉(Q4参照)の日本支部が、2000年に日本の名作モダニズム建築20選を決める際、「1920~60年代に建てられたモダニズム建築」で「竣工当時の姿が比較的保たれているもの」という基準で選定を行いました。しかし今回、カーサはドコモモとは違う独自の視点で選定を行っています。1.日本が未来を志向した時代(戦後、高度成長期を経て大阪万博〜石油危機のころまで)の建築であること。2.造形&デザインに、日本でしか見ることのできない独自性があること。3.日本の伝統や歴史的背景の下、独自の発展を遂げたものであること。4.観光資源になる可能性があること、の4つがその大きな基準です。

Q.4DOCOMOMO(ドコモモ)って何のこと?

正式名称はDocumentation and Conservation of buildings, sites and neighborhoods of the Modern Movement。その略称をDOCOMOMO(ドコモモ)と呼んでいます。1988年、フーベルト=ヤン・ヘンケット氏の提唱によりオランダで設立(現在の本部はポルトガル)。建築史家以外に、建築家、エンジニア、行政関係者など幅広い分野の人々が参加し、モダニズム建築の記録調査および保存に努めています。2014年現在64か国に支部があり、日本支部であるドコモモ・ジャパンは1998年に発足。2000年の総会で正式承認され、各国支部と同様、日本におけるモダニズム建築のリストDOCOMOMO 20選を発表。03年には100選を選定し、現在では174選を数えるまでになっています。

Q.5世界遺産になっているモダニズム建築はある?

Q.1で登場した〈バウハウス〉や、〈ルイス・バラガン邸〉(1948年竣工)、〈シュレーダー邸〉(1924年竣工、ヘリット・リートフェルト)などがよく知られています。ルシオ・コスタが都市計画を、オスカー・ニーマイヤーが主要な建築物の設計(写真はブラジリア大聖堂)を手がけたブラジリアも、1987年に街全体が登録。日本がフランス、スイス、インドなど7か国との共同で、〈国立西洋美術館〉を含むル・コルビュジエの建築作品17件を推薦し、2016年のユネスコ世界遺産委員会で正式登録されました。
photo: Yuji Ono