「カーサ ブルータス」主催、
モダニズム建築講演会リポート。

危機にあるモダニズム建築を救うには今、何をすべきか。
カーサ ブルータスとボッテガ・ヴェネタの共催で開催されたシンポジウムの様子を報告します。

特別講演会は〈ホテルオークラ東京〉で収録された「将来後悔しないように今行動を起こしましょう」というトーマス・マイヤーの力強いメッセージで始まった。

今、消滅の危機にさらされているモダニズム建築。『ジャパン・アーキテクツ』展を開催中の金沢21世紀美術館でカーサ ブルータスは建築の保存に深い関心を持つ槇文彦、森俊子、松隈洋の3人に登壇を依頼、特別講演会を開催した。

トーマス・マイヤーのビデオメッセージで始まった講演会ではまず槇文彦が60年を超えるキャリアで自身の作品を「再生」した事例として、打ち放しコンクリートの表面を削り、高流動コンクリートで厚さを増して耐候性能をアップさせた〈名古屋大学豊田講堂〉(1960年)、解体された建物と同じアーケードを使用した小さなパビリオンをつくり、記憶を継承した〈沖縄水族館〉(75年)などの手法を紹介した。「50歳、100歳の建物でも手を入れればまだまだ使うことができる。建築はその時代の記憶の装置なのだから、長い時間の中での都市文化を考慮すべき」と語った。

森俊子は近隣の住民が資金を集めてビジターセンターをつくったF・L・ライトの住宅のことや、ポール・ルドルフの住宅を買い取って修復保存するなど、アメリカの事例を中心に紹介。ピエール・シャローが設計したパリの〈ガラスの家〉はアメリカの愛好者が購入し、もとの雰囲気を残して使えるようリノベーションしている。「〈ホテルオークラ東京〉のような公共の建物には人々の楽しい思い出が詰まっている。それを壊してしまうのは野蛮だと思う」

ドコモモ・ジャパン代表の松隈洋は戦後の日本建築史における、50年代のモダニズム建築の重要性を強調。例えば坂倉準三の〈神奈川県立近代美術館 鎌倉〉(51年)は〝芸術の殿堂〟が市民に開かれた美術館へと逆転した例だ。また建て替え計画があったが、卒業生の熱意で耐震補強を施した松村正恒設計の〈日土小学校〉(56〜58年)の事例を紹介した。

最後に3人はそれぞれ、「生活と結びついたモダニズム建築は失われがち。警鐘を鳴らす必要がある」(槇)、「過去と未来をつなぐのは建築家の仕事だが、市民もそれに参加すべき」(森)、「建築について知ることで建物を守れるし、その人の世界も広がる」(松隈)と提言し、講演会を締めくくった。

登壇者の方々

  • 槇 文彦さん

    建築家。1928年生まれ。65年槇総合計画事務所設立。主な作品に〈代官山ヒルサイドテラス〉、NYワールドトレードセンター跡地〈4WTC〉など。プリツカー賞、AIAゴールドメダルなど受賞多数。

  • 森 俊子さん

    建築家。NYでToshiko Mori Architect主宰。2012年ヴェネチアビエンナーレ国際建築展に《Dialogue in Details》を出展。トーマス・マイヤーの別荘も手がける。芸術院アカデミー賞など受賞多数。

  • 松隈 洋さん

    1957年生まれ。専門は近代建築史。モダンムーブメントに関わる建築、環境の記録調査と保存活動を行う〈DOCOMOMO Japan〉代表。『近代建築を記憶する』など著書のほか、建築展の企画も。