FOOD
グッドデザインな地酒〈新政〉の蔵を訪ねて | 行くぜ、東北。
November 2, 2015 | Food, Design, Travel | sponsored | photo_Tetsuya Ito text_Kei Sasaki editor_Akio Mitomi
居酒屋で目を引き、クロスがぴんと張られたレストランのテーブルにも違和感なく馴染む。日本酒のボトルに「デザイン」の概念を持ち込み、瓶に詰める酒と合わせて強いメッセージを発信し続ける。秋田〈新政酒造〉の酒蔵を訪ねました。
ここ数年、いちどは低迷した日本酒人気が再び盛り上がりを見せている。その牽引役のひとりといわれているのが秋田県秋田市にある〈新政酒造〉八代目の佐藤祐輔さん。大学卒業後、フリーのジャーナリストとして活躍したのち、2007年に帰郷。蔵ので仕事を始めた翌08年にはスタッフを平均年齢30歳前後の若い社員に一新し、少量仕込み、長時間醗酵の酒造りに切り替え、細やかな仕込みで新たな銘柄をどんどん生み出している。大胆な変革は“新政レボリューション”と呼ばれるほどだ。
祐輔さんは酒を「作品」と呼ぶ。「その酒にしかない個性と、飲んだ人にうったえかけるメッセージがあることが重要。ラベルは酒の顔。おろそかにできない」。酒質設計をしたらまずラベルのデザインを考えるし、ネーミングやラベルを先に決めることも。デザインの際に心がけるのは、どの酒にも似ていないオリジナリティがあり、かつ和洋折衷感があること。学生時代から祐輔さんの依頼で〈新政〉のラベルデザインを手がけ、現在は社員としてクリエイティブを統括するデザイナーの石田敬太郎さんと議論やイメージの交換を重ね、完成させるのだという。
ネーミングやラベルデザインは、日本酒業界に前例を見ない斬新なものだが、新生〈新政〉の人気の理由は「目新しさ」や「格好よさ」だけではない。酒造りのモットーは徹底した“クラシック回帰”。祐輔さんが酒造りに加わるようになってからは醸造用アルコールを添加して醸す普通酒を減らして純米酒の生産量を増やし、10年にはトレーサビリティの徹底や地域貢献を目的に原料米を秋田県産米に限定した。醸造用アルコールは、第一次世界大戦中に清酒の保存のために使われ始め、現在は香りや切れを出すために添加されることが多い。12年には、その醸造用アルコールの使用も完全に廃止し、全量純米化に踏み切った。
酒造メーカー〈白瀑〉〈春霞〉〈一白水成〉〈ゆきの美人〉の代表と若手醸造家ユニット〈NEXT5〉を結成。5人のメンバーが主要工程を順番に担当して醸す酒が毎年話題に。今年はアーティスト・村上隆率いる〈カイカイキキ〉とコラボし、〈ゆきの美人〉で仕込む。2016年4月発売予定。
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