土田貴宏の東京デザインジャーナル|ロエベ ✕ ジョナサン・アンダーソンの新空間

家具やプロダクトの展示会を中心に、主に東京で見つけた新しいデザインのトピックを取り上げる「東京デザインジャーナル」。デザインジャーナリスト・土田貴宏が厳選してお届けします。

ムラーノガラスのランプが窓際に映える2階。什器のディテールはアーツ&クラフツの椅子がモチーフになっている。

昨年、まだ20代だったジョナサン・アンダーソンがクリエイティブ ディレクターに就任して話題になったロエベ。そのコレクションだけでなく、ブランドの世界観の発信にも発揮される彼のクリエイションは、とても新しい感じがする。7月にグランドオープンしたカサ ロエベ 表参道も、ジョナサン自身がきめ細かくディレクションを行った。

「カサ」という言葉が表す通り、空間のひとつのテーマは“家”。カーペットやカーテンを効果的に使った空間を、19世紀後半のイギリスで発祥したアーツ&クラフツ運動がモチーフの椅子をはじめ、ヴィンテージ感のある家具が飾る。この運動に参加したフィリップ・ウェブがデザインしてモリス商会が販売した《サセックスチェア》が象徴的に置かれ、そのディテールは什器やハンガーにも取り入れられた。また鮮やかなグリーンの瑪瑙を使ったキャノピーや黒い大理石が目を引くファサードは、20世紀半ばからスペインで活躍したモダニズム建築家、ハビエル・カルバハルが1960年代に手がけたロエベの往年のマドリード店にインスピレーションを得たもの。表参道のショップと同時期にオープンしたミラノのカサ ロエベでも、同様の趣向で店内が設えられている。

ロエベはスペインのブランドだが、創業者はドイツ人で、ジョナサン・アンダーソンはイギリス出身。そして現在、ロエベのアトリエがあるのはパリで、新しいアナグラムなど一連のグラフィックもパリが拠点のM/M(Paris)が担当している。国も時代も超えてセレクトされた要素を折衷し、リラックスしつつも颯爽としたコンテンポラリーな空気。そのすみずみに上質なもの作りの魅力が息づいている。
フィリップ・ウェブがデザインしてモリス商会が販売した《サセックスチェア》は1860年代のデザイン。
ファサードは、1960年代のロエベのマドリード店へのオマージュ。新しいアナグラムは、ドイツ人タイポグラファーのベルトルド・ウォルプによる書体をアレンジした。
M/M(Paris)がデザインした新しいロエベのマークと、ヴィンテージの家具、カーテン、大理石がコンテンポラリーなイメージを作る。
瑪瑙を使った鮮やかなキャノピーが、ファサードと店内をつなぐ。

Casa Loewe Omotesando

東京都港区北青山3-5-29
TEL 03 5771 4811 11時〜20時。無休。公式サイト

土田貴宏

つちだたかひろ デザインジャーナリスト、ライター。家具やインテリアを中心に、デザインについて雑誌などに執筆中。学校で教えたり、展示のディレクションをすることも。 casabrutus.comトップへ