DESIGN
火星住宅コンペの優勝はアイスハウス!
November 24, 2015 | Design | a wall newspaper | text_ Mika Yoshida & David G. Imber editor_Yuka Uchida special thanks to SEArch (Space Exploration Architecture), Team also includes: Christina Ciardullo, Kelsey Lents, Melodie Yashar and Jeffrey Montes.
氷で建てた住居で、火星に暮らす。NASAの心を日本人建築家たちチームの発想が、射止めました。
NASAの火星居住コンペで、NYの建築家、曽野正之・祐子らのチームが1位に輝いた! と内外のメディアが報じたのは、9月末のこと。超大御所のノーマン・フォスター建築事務所を2位に抑えての勝利は、彼らも当初、耳を疑ったとか。
そもそもこのコンペはNASAが宇宙開発の技術を広く公募する試みのひとつ。2030年代、宇宙飛行士4名を火星に1年間滞在させて探索を行う計画に向け、安全で快適に暮らせる居住施設のデザインを募った企画だ。
材料は現地調達で、3Dプリントを用いるのも条件。ほかの応募作が火星の土壌を使った基地を目指したのに対し、曽野チーム8名は火星の「水」に着眼した。ロボット2台が地底の氷を採掘しては、溶かし、強度を高める添加剤を加えて再び凍結。3Dプリンターで造形し、氷の壁をつくるという画期的なアイデアだ。
火星で氷の家をつくり、着陸船の内部を居住空間として人が住む。酸素・食料をつくるために緑化を図る。その植物を育てるのも、もちろん火星の地下水だ。
まるでSF掌編小説を思わせるロマンチックな発想を、実現に近づけたのも、丹念なリサーチと研究あってこそ。曽野の建築事務所〈Clouds AO〉は、4年前から空き時間を利用しては宇宙・航空建築のリサーチや記事執筆を行ってきた。彼ら3名と協働して取り組んだのが、コロンビア大学のマイケル・モリス教授率いる宇宙建築のチーム〈SEArch〉の5名だ。8人が一丸となって、「マーズ・アイスハウス」を生み出した。
氷は放射線を遮蔽する性質があり、しかも光を透過する。火星の平均外気温はマイナス40℃ということからも、氷は大変理にかなった素材といえる。でも「前例のない斬新で実験的な提案であったため、1位はないだろうと思っていました」と曽野。優勝に選んだNASAの柔軟性と、ほかと違う独創性を評価する姿勢に、アメリカの良い部分を見た気がしたという。実用までには技術審査など過程はまだまだあるが、火星への夢をぐっと身近にしてくれた「氷の家」。既成概念にとらわれないおおらかな発想こそが、未来を切り拓く、と実感させる。
そもそもこのコンペはNASAが宇宙開発の技術を広く公募する試みのひとつ。2030年代、宇宙飛行士4名を火星に1年間滞在させて探索を行う計画に向け、安全で快適に暮らせる居住施設のデザインを募った企画だ。
材料は現地調達で、3Dプリントを用いるのも条件。ほかの応募作が火星の土壌を使った基地を目指したのに対し、曽野チーム8名は火星の「水」に着眼した。ロボット2台が地底の氷を採掘しては、溶かし、強度を高める添加剤を加えて再び凍結。3Dプリンターで造形し、氷の壁をつくるという画期的なアイデアだ。
火星で氷の家をつくり、着陸船の内部を居住空間として人が住む。酸素・食料をつくるために緑化を図る。その植物を育てるのも、もちろん火星の地下水だ。
まるでSF掌編小説を思わせるロマンチックな発想を、実現に近づけたのも、丹念なリサーチと研究あってこそ。曽野の建築事務所〈Clouds AO〉は、4年前から空き時間を利用しては宇宙・航空建築のリサーチや記事執筆を行ってきた。彼ら3名と協働して取り組んだのが、コロンビア大学のマイケル・モリス教授率いる宇宙建築のチーム〈SEArch〉の5名だ。8人が一丸となって、「マーズ・アイスハウス」を生み出した。
氷は放射線を遮蔽する性質があり、しかも光を透過する。火星の平均外気温はマイナス40℃ということからも、氷は大変理にかなった素材といえる。でも「前例のない斬新で実験的な提案であったため、1位はないだろうと思っていました」と曽野。優勝に選んだNASAの柔軟性と、ほかと違う独創性を評価する姿勢に、アメリカの良い部分を見た気がしたという。実用までには技術審査など過程はまだまだあるが、火星への夢をぐっと身近にしてくれた「氷の家」。既成概念にとらわれないおおらかな発想こそが、未来を切り拓く、と実感させる。
ICE HOUSE
氷の家の断面図。地下水で緑化も。
外壁は氷壁を二重に。内側には縞状に刻まれたレールに沿って3Dプリンターのロボットが移動する。氷は放射線を遮って人体を防護するだけではなく、透光性があるので夜は内側から闇を照らす。火星の灯台、人類にとっての記念碑だ。公式サイト
外壁は氷壁を二重に。内側には縞状に刻まれたレールに沿って3Dプリンターのロボットが移動する。氷は放射線を遮って人体を防護するだけではなく、透光性があるので夜は内側から闇を照らす。火星の灯台、人類にとっての記念碑だ。公式サイト
CLOUDS AO & SEARCH TEAM
氷の家を生んだチームです!
マイケル・モリス教授は〈SEArch〉代表。曽野正之&祐子夫妻とオスタップ・ルダケヴィッチの〈Clouds AO〉は、同時多発テロ犠牲者のための慰霊碑や、有志の運動により存続の危機を免れたセントマークス書店の新デザイン等、人の心に何かを刻み込む作品で知られる。
マイケル・モリス教授は〈SEArch〉代表。曽野正之&祐子夫妻とオスタップ・ルダケヴィッチの〈Clouds AO〉は、同時多発テロ犠牲者のための慰霊碑や、有志の運動により存続の危機を免れたセントマークス書店の新デザイン等、人の心に何かを刻み込む作品で知られる。