Good TOOLS For Me|愛用のそば猪口を教えてください。

3人のクリエイターに愛用している日用品を聞くこのコーナー。今回はそば猪口。小鉢にも、湯飲みにもなる懐の深い器です。

古伊万里のそば猪口。

江戸後期の猪口で、文様は瓔珞文(ようらくもん)と言って、インドの耳や首から下げる装身具を意匠化したものとされる。金継ぎで新たな表情に。

私は陶磁器の修理屋です。趣味と勉強を兼ねてたまに骨董市に出かけるのですが、仕事柄どうしても傷ものから目がいきます。この器も最初から傷があって、パテと、合成粉と呼ばれるいろいろな金属を混ぜて金色風にしたものでお直しがされていたので、漆と純金でやり直してあげようと使命感のようなものがありました。

たかが器、されど器。綺麗にすると自分の気分も一変します。ちなみに、光が燦々と注ぐ明るい住空間は地味めに、陰翳礼讃を地でいく暗めの空間には、少し派手かなと思うくらいの直しがちょうどいいです。そば猪口に多い俳画風のものより、どことなく異国の香りがする文様も目に留まりました。また、線が決して上手いとは言えないところも味があって愉快。新米の職人さんが描いたのでは、なんて想像を巡らせます。内側の底には五弁花といって、花びらが5つに分かれた、かわいい花も描かれています。江戸時代に作られたというのに現代の器や西洋の器ともよく似合うし、料理のスタイルを選ばず、使いやすい猪口です。

黒田雪子(くろだゆきこ)

金継師。グラフィックデザイナーを経て、器の修理業へ転身。金継ぎとは、漆を用いて陶磁器の傷を直し、金や銀で化粧をする技法。公式サイト