CULTURE
映画『バケモノの子』と国立代々木競技場。
July 10, 2015 | Culture, Architecture | a wall newspaper | photo_Yurica Terashima text_Keisuke Kagiwada editor_Yuka Uchida
実はかなりの建築オタクだった細田守監督。最新作『バケモノの子』のクライマックスにも、丹下健三の国立代々木競技場が登場します。
細田守監督の最新作『バケモノの子』には、監督の建築マニアっぷりが遺憾なく発揮されている。彼が背景画にこだわる人であることはよく知られており、それは渋谷の裏路地からバケモノたちの暮らす「渋天街」に迷いこんだ孤独な少年が、一匹狼の熊徹に弟子入りし、親子のような絆を育んでいくという本作にしても同じ。渋谷の風景も、マラケシュをモチーフにしたという「渋天街」の街並みも、写真のようにリアルだ。リアルという意味では、「渋天街」のランドマークが渋谷のそれとリンクしている点も見逃せない。入口はセンター街のゲートを意識しているし、109を模した給水塔もある。そればかりか老舗中華料理店〈麗郷〉そっくりのレンガ造りの建物まで登場する。
しかし、監督の建築マニアっぷりがうかがえるのはここからだ。例えば、熊徹のライバルが住む日本家屋は「もっと隈研吾的に!」という監督の指示のもとに描かれている。あるいは、熊徹たちが戦う闘技場はローマのコロッセオを参考にしたデザインになっている。しかも、単に意匠をなぞっただけではなく、建材の質感や動線まで考え抜かれているのだ。それには、クライマックスの舞台である国立代々木競技場の実際の図面までが手がかりとして使用されている。
なぜそこまでリアリティーにこだわるのか? それは本作を単なるファンタジーとしてではなく、観客が渋谷の路地裏を曲がれば体験できるかもしれない身近な出来事として描きたかったという監督の意図による。〝現実感〟。監督は制作中、しきりにこの言葉を繰り返したという。
ここのほかにも、もしかしてあの建築? というシーンが多々ある本作。背景に注目して、隠れた名建築を探してみるのも面白い。
なぜそこまでリアリティーにこだわるのか? それは本作を単なるファンタジーとしてではなく、観客が渋谷の路地裏を曲がれば体験できるかもしれない身近な出来事として描きたかったという監督の意図による。〝現実感〟。監督は制作中、しきりにこの言葉を繰り返したという。
ここのほかにも、もしかしてあの建築? というシーンが多々ある本作。背景に注目して、隠れた名建築を探してみるのも面白い。
『バケモノの子』
舞台はバケモノたちが暮らす「渋天街」と渋谷の街。それらを行き来する1人の少年とひとりぼっちのバケモノとの心温まる交流を描く。役所広司をはじめとする豪華声優陣にも注目。7月11日から全国TOHOシネマズ等で上映。<a href="http://www.bakemono-no-ko.jp/" target="_blank">公式サイト</a>
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ほそだまもる
アニメーション映画監督。1967年富山県生まれ。2006年に監督した『時をかける少女』がロングランヒットし、注目を集める。その後、『サマーウォーズ』『おおかみこどもの雨と雪』を手がけ、世界的な評価を受ける。
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